一方おキヌが退院した後の令子とおキヌだったが、以前の平和で穏やかな日常が戻っていた

横島が辞めて以来ピリピリしていることが多かった令子だが、奇しくもおキヌが記憶を失った影響から横島を元々居ないモノと考え生活することで多少なりとも変わっている

おキヌの精神の安定の為にとはいえ、一からおキヌとの生活を始めたことは令子にもいい影響を及ぼしていたのだ


「ごーすとすいーぱーって、大変なんですね～」

そんな美神事務所で暮らし始めたおキヌだったが、ゆっくり休むよりは以前と同じようにＧＳになる為の勉強がしたいと言い出していた

体調が問題なかった影響もあり、以前と同じ生活をすれば記憶が戻るかもしれないと考えてるようなのだ

記憶がない件はそれほど不安ではないようだが、やはり記憶を取り戻したいとの想いは強い


「楽な商売ではないわね。　特殊な能力が必要だし危険だもの」

「私に出来るんでしょうか……」

おキヌは以前と同じようにＧＳの勉強をしたいと言うが、当然おキヌは元々ＧＳの勉強などしてないのだから一から勉強を始めていた

まあ令子は偽の経歴に合わせて復習の意味を込めて一から勉強するように言ったのだが……

結果的におキヌは見習い兼事務員として正式に美神事務所の一員になっている


「ＧＳは分からないけど、オカルト関連の仕事は結構あるわ。　だから今は心配しないで自分のペースで生活しなさい」

自身の失った記憶を探してＧＳを目指すおキヌだが、潜在的に憧れと不安の両方が入り混じっているようだった

時折無意識に壁にぶつかったりすることもあり、幽霊だった時の記憶が完全に忘れてない行動も多少ある

おキヌを定期的に診察しているカオスの見立てでも、何かのきっかけで記憶が戻る可能性は高いとのことなのだ

状況は変わったが概ね歴史通りの様子だった

令子にとってはつかの間の平和なのだろうが、久しぶりに心落ち着く日々が続いていく



「なあ、今の俺で勘九朗に勝てると思うか？」

そして唐巣の依頼が一段落した横島達だったが、こちらも美智恵とハーピー対策は進めながらも平和なひと時を満喫していた

この日も夕食が終わり、雪之丞はふと今の自分と勘九朗の実力差が気になり横島と魔鈴に尋ねるが……

雪之丞が二人に視線を向けると、横島は魔鈴の膝枕で耳かきをして貰ってる最中である


「真っ向から戦えばキツイだろうな～　あいつの場合は魔装術が完成してるし……」

「純粋な霊力値や戦闘能力では雪之丞さんは負けています」

雪之丞の問い掛けに答える横島と魔鈴だったが、二人とも幸せそうな表情であり雪之丞は何故か甘い空気が見える気がした

特に横島の表情は緩みきっており、とてもＧＳ試験で戦った相手には見えないほどだ


「しかも次にあいつと戦う時は、環境も向こうに有利だろうからな。　お前はタイマンでやりたいんだろうが難しいかもしれん」

一応真面目に答える横島だが、表情とのギャップが酷かった

思わずバカップルと言葉が出そうになる雪之丞だったが、そこを堪える辺りは成長したのかもしれない


「雪之丞さんもどうですか？」

横島の耳かきが終わり魔鈴はついでに雪之丞もどうかと声をかけるが、雪之丞は顔を真っ赤にして首を横に振っている

どうやら先程から自分が羨ましそうな表情をしていた事実を雪之丞は気付いてないようだ