母からの伝言

「泣き寝入りか……」

「いや、このままには出来ない。 このままでは両者にとっていい結果にはならないからね」

再び唐巣が沈黙する中、現状を考えて泣き寝入りかと呟く雪之丞に唐巣はこのままには出来ないと告げる

そんな唐巣に雪之丞やピート達は驚きの表情をみせるが、唐巣はこのまま終わらせるつもりはない


「しかし先生、現実的に証拠がない以上は……」

「ピート君。 法律や規則が全てではない。 時には心を鬼にして戦わねばならないのだよ」

雪之丞が驚きピートが具体的な行動に悩みどうするのか不思議そうだが、唐巣は強い決意の元で事件の解決を口にする


「締め上げるとしたらGS側っすか?」

「そうなるね。 あのGSは同じような前科がある。 今あのGSの詳しい身辺調査と師匠筋への根回しをしているとこだよ」

雪之丞達がどうするのか首を傾げる中、横島は一人事情を理解してるかのように話を進めていく

唐巣は横島の乱暴な言葉に少し困ったようになるが、あえて指摘せずに今後の対策を話していた


「どういうことですかいノー?」

「証拠がないなら作ればいいだけだ。 だいたいこの手の悪質なGSは叩けば埃の一つや二つは必ず出てくる」

横島と唐巣の会話で大筋で理解した雪之丞とピートだが、タイガーはイマイチ理解出来てないようで申し訳なさそうに横島に尋ねるが答えはしごくシンプルなものだった


「GS協会も悪質なGSには悩まされてるからね。 今回の件には協力してくれてるのだよ」

唐巣はあえて横島達には言わなかったが、この件はすでに六道家も関わっており悪質なGSが音を上げるのは時間の問題である

悪質なGSの師匠筋への根回しやGS協会内への調整をしてるのは六道家だった

実際GS協会は以前から悪質なGSには目を付けていたが、明確な証拠がない以上積極的に動く者がいなかったのだ

しかし唐巣と六道家が動くならばと協力する者が増えてくる

正直言えば並の幹部が動いたのではGS協会内の不和を呼び立場を悪くするだけなのだが、頑なな信念がある唐巣と事実上GS協会を支配する六道家ならば問題はない

まあ実際はこういった六道家の権力や手法には批判的な意見も多いが、六道家が居ないと組織として纏まらないのも事実だった

かつて六道家がごり押ししたGS協会の数々の改革案が無ければ、日本のGS協会はアメリカのGS協会に飲み込まれていただろうというのが大筋の見方なのである

良くも悪くも六道家頼みのGS協会であり、その六道家にモノを言える数少ないGSが唐巣だった

その六道家だが今回の件では、唐巣が頼んだ件のついでにGS協会内の引き締めと実力がない悪質なGSの締め上げをするつもりである

令子のように実力があるのならば多少大目に見るのだろうが、実際は中途半端な実力の者が悪質なGSのほとんどなのだ

六道家は今回の件をみせしめにして業界のモラル向上をしたいと考えている



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