母からの伝言

数日後、横島達が教会を訪れると唐巣は重苦しい空気を纏っていた


「君の予想が当たってしまったよ」

横島の顔を見るなり複雑そうな表情を浮かべる唐巣は横島達が来るまでの数日の調査で分かったことを話すが、その表情はやはり複雑そうなままだ

結果から言うとやはり犯人は、依頼人の夫婦に一番親身になっていた友人だったらしい

他にアテもないことから唐巣としては無実を証明するつもりで調査したらしいが、男がとあるGS事務所に頻繁に出入りしている情報を掴んだのである

唐巣が少し調べた結果そのGSの事務所は以前から経営がかなり苦しいらしく、何度か依頼人と揉め事を起こしてGS協会に訴えられた前科があった

その中には依頼人が毎晩同じ悪夢を見て金を払うように脅迫されたという訴えもあったらしい

それ以来GS協会が厳重注意をして、要注意人物として目を付けられてるGSだった


「理由はなんなんだ? 呪いの依頼も安くはないだろう」

「目的は友人である奥さんらしい。 一年ほど前に彼が奥さんを無くした時に依頼人夫婦は親身になって助けたようだが……」

呪いを仕掛けたGSは判明したが、犯行の理由が分からない雪之丞やピート達は不思議そうに理由を尋ねる

そんな雪之丞達に唐巣が語ったのは、あまりにも愚かな理由だったと言うしかなかった


「奥さんは旦那さんの居ない場所で何度か友人に迫られたと教えてくれたよ。 その時はうまくかわしたらしいが、それ以来友人は恩返しだと言い何かと夫婦に親切にしていたそうだ」

目的が友人である奥さんだという事実には、横島もまた驚きを隠せないようである

妻を無くした後に親切になった友人に惚れたと言えば聞こえはまだいいが、友人夫婦に近付きあわよくば男女の関係になりたいとの歪んだ愛情には言葉も出なかった


「証拠がないんすね……」

唐巣の話が終わった頃、横島はぽつりと言葉を漏らし唐巣の表情が重苦しかった理由を口にする


「そうだよ。 今のところ明確な証拠がないんだ。 呪いは証拠にはならないからね」

状況的には限りなくクロなのだが、夫婦に報告するには明確な物証が必要だった

GS側も違法スレスレの手法を得意としており証拠を残す可能性が低く、友人の側もまたGSに行くことを勧めたことを考えると証拠になる物はないだろう

ある意味オカルトを理解した知能犯だった


「なにか方法がないんですかいノー」

唐巣と横島が沈黙したことでタイガーは真相を明らかにする方法がないのかと尋ねるが、唐巣は静かに首を横に振るしかしない


「GSは警察じゃないからね。 調査は出来ても捜査や逮捕は出来ないんだよ」

タイガーのみならず雪之丞やピートまでが期待するように唐巣の言葉を待つが、唐巣が語ったのはGSとしての限界だった

これが命に関わるほど深刻ならともかく、現状では友人が犯人だと警察が捜査するには少々証拠が足りないのである

ただでさえ立証が難しいオカルト犯罪なのに、被害が今のところ会社をクビになっただけでは説得力がなかった

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