母からの伝言

一方その日の魔鈴はカオスの助手としてマリア改造の設計を始めていた

基本になるのは未来でカオスがこの先十年分の改造なのだが、いくつか見直しが必要な点もあり設計からやり直していたのだ

まあマリアの基本システムは非常に優秀であり手を加える予知は少ないのだが、武装と弱点だったエネルギー問題などを変えるつもりである

何より武装を対心霊兵器に換装するのは早急に必要であった


「風水盤の時には間には間に合わせたいのう」

「そういえばその事件は元々は小竜姫様が雪之丞さんに依頼した事件だったはずですよね。 この世界ではどうなるのでしょう?」

黙々と作業をしていた二人だが、ふとした言葉から香港の事件の話になる

未来ではGS試験で日本GS協会に追われる立場になった雪之丞が香港に居た為に地理的な要因などから依頼されたが、今回は雪之丞は香港に縁がなくその可能性が低い

小竜姫が依頼するということは少なくとも神界絡みであり雪之丞の代わりに誰かに依頼をするのだろうが、問題はその相手が誰になるかだった


「普通に考えれば唐巣か美神令子に頼むと思うが、もしかしたらおぬしに来るやもしれん。 経験や実績から考えれば当然あの二人を選ぶだろうが、おぬしを選択しても不思議ではないからのう」

小竜姫が誰に依頼をするかは、あの事件の一番のポイントと言ってもいいほどである

魔鈴としては正直始めから自分に依頼してくれた方がやりやすいのだが、普通に考えたら令子か唐巣を選択するだろう

GS試験は横島の行動により阻止した形となっているが、あれが実力だと見るのは難しいし魔鈴自身は実力を見せてない

調査を頼むなら唐巣でありメドーサ退治を含めた解決ならば令子に頼むのが自然である


「一歩間違えれば取り返しのつかない事態になりますね」

元始風水盤一つで世界がひっくり返るとは魔鈴もカオスも思ってないが、それ相応の混乱が起きることは確かだろう


「おぬしにはちょうどいい経験じゃな。 それに歴史を知る分だけこちらが有利じゃよ。 アシュタロスが動くまでならばなんとかなる」

事の重大さにプレッシャーを感じる魔鈴にカオスはいい経験になると笑っている

正直アシュタロス以外ならば、歴史を知るアドバンテージを生かして上手く出し抜く自信がカオスにはあった

あるべき歴史通りに進めればいいだけなのだから、少なくとも元始風水盤の事件は自信がるようだ


「カオスさんが一緒だったのが不幸中の幸いですね」

自信に満ちた笑みを見せるカオスが魔鈴は本当に頼もしく感じる

どんな危険や逆境でさえも、いい経験だと考え楽しむ余裕があるカオスの凄さを感じずにはいられない

今回の過去への逆行もカオスは歴史や世界の根幹を知るいい機会だと考えており、滅多に出来ない貴重な経験ができると喜んでるくらいなのだ


「物は考えようじゃよ。 ルシオラ復活の難しさに比べれば風水盤ごとき問題ではない。 タネの知れてる手品と同じじゃ」

絶対の自信と確信を持つドクターカオスの存在は実戦経験が少ない横島と魔鈴の精神的柱だった

多くの不安と希望が入り混じった魔鈴にはカオスの強さが本当に心地よかった



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