母からの伝言

結局唐巣は魔鈴とエミの許可を取ることを条件に横島達の参加を認めることにする

まあよく知らない相手ならともかく横島達とはいろいろ関わりがあり、性格的に断れなかったという方が正しいのだろうが


「じゃあ、依頼人の家に行くが注意点を幾つか言うから気をつけて欲しい」

唐巣は教会を出発する前に横島達に必要最低限の注意点を説明する

まずは依頼人の家や近所で自分達がGSだと悟られてはダメだと言うこと

そして依頼人の家には盗聴器の類がある可能性もあるから、不用意な発言はしないことであった


「まるで探偵だな」

「実際近いことはするんだよ。 まずは依頼人の家の霊視と盗聴器の類の有無の確認から始まるからね」

唐巣の注意点は探偵が調査するようなものが多かったが、実際にやることもGSと言うよりは探偵に近い

雪之丞はその慎重なやり方に驚きの表情を見せるが、仮に呪いをかけてる者が居るとすれば依頼人の近くで監視してる可能性も高かった

GSを雇ったということで相手を刺激することは出来るだけ避けたく、友人や知人のふりをして依頼人の家に行き密かに調査する必要があるのだ


「心眼君の見立てと夫婦の話からすれば、恐らく嫌がらせの類の呪いだ」

唐巣は現状を横島達に説明するが、残念ながら唐巣も確証がないのが現状だった

今回の厄介なところは、生命に直結するような呪いではなく嫌がらせの類だということである

危険性は少ないがその分相手の特定が難しい


「いい人そうなんですけんノー」

「いい人とか関係ないだろ。 人が人を恨む理由なんて他人から見たらくだらないことも多いからな」

唐巣の説明にタイガーは人の良さそうな夫婦が怨まれてるとは信じられないようだが、雪之丞は人の良し悪しは関係ないと告げる

この言葉には妙な重みがあり、やはり雪之丞の過去は厳しいものなのだろう


「では行こうか」

一通り説明が終わると横島達は夫婦と共に彼らの自宅へと向かうが、そこは普通の団地の一室の普通の部屋だった

一見するだけだと悪霊の気配も無ければ呪いの気配もないただの部屋である

唐巣は横島達に霊視を頼むと自身は盗聴器の類がないか調べていく


「いや~、いい部屋っすね。 幸せそうで羨ましいっすよ」

唐巣が静かに盗聴器を探し雪之丞達が緊張気味に霊視ゴーグルで霊視をする中、一人場違いな空気を出す横島は適当な会話をして夫婦と談笑していた

無論横島も心眼が霊視はしているが、盗聴されているとすればあまり無言でも困るので適当な会話を続けていたのだ

夫婦には一応説明はしてるが、せっかく来たのだからとお茶とお菓子などを出しており横島は一人夫婦と寛いでいる


(横島さんらしいと言えばらしいのですが……)

確かに唐巣はGSだと悟られないようにしろと言ったが、盗聴されている可能性を考えてまるで友人のような態度で平然と夫婦と談笑する横島にピートは驚きを感じていた

平然と嘘をつくと言うか、この辺りの大胆さと神経の太さは令子を思い出してしまう



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