母からの伝言

「一つ疑問があるんだが、なんであの人はわざわざ未来に娘を預けに来たんだ? 単純に考えるなら過去の自分の方がいい気がするんだが」

風に吹かれながら考え事をするのが日課になった横島は独り言のように心眼と話をするが、この時間がいつの間にか横島にとって重要な時間になっている

頭の整理と今後への対応など考えるのに丁度いいのだ

まあ魔鈴やカオスとも当然緊密に相談はしてるが、それでも自分の頭の整理などは必要であった


「普通に考えれば何かしらの理由があるのだろう。 わざわざ無駄なことをする人ではない」

横島の疑問に心眼も明確な答えは持ち合わせてないが、二人が確信してるのは何かしらの理由があったとのことだろう

実際美智恵が何回時間を越えて、いつから何処までの未来や歴史を知ってるかなどは本人しか分からない

最悪の場合は横島の変化から美智恵の行動が変化して、アシュタロス戦全体が変わる可能性もゼロではないのだ


「やっぱ、あの親子に一番与えちゃダメな能力だよな」

「下手に動くとこちらの秘密を悟られる可能性があるしな。 後手に回らざるおえまい」

単純に考えて横島は美智恵との歴史の改変合戦はゴメンだった

その為には自分達の秘密は最後まで隠してアシュタロス戦を迎えたい

ハーピーの事件は令子よりも美智恵の動きを見極めるのに重要な一件であった



「メドーサ様、女の正体が掴めました」

一方都内の某高級ホテルの一室では、鎌田勘九朗がメドーサに調査報告書らしき書類を渡していた

酒を飲んでいたメドーサは無言のまま報告書を受け取り目を通す


「魔女ねぇ……」

「オカルト研究家として有名なようです。 分野は中世以前のヨーロッパの魔法を研究しており、魔法のほうきの再現を始め幾つかの失われた技術を蘇らせた人物のようです」

メドーサが勘九朗に調べさせていたのは魔鈴の素性であった

GS試験の最後に姿を見せた魔鈴がメドーサは何故か気になっていたのだ


「変だね。 あの女の力はこんな物じゃなかった。 少なくとも美神令子を越える程度の霊力があったはず」

「申し訳ありません。 魔鈴めぐみはGSとしての実績はほとんどなく、イギリスでのGS試験時の成績しか分かりませんでした」

魔鈴の報告書は大まかな経歴の他はGS試験時の成績しか乗ってないが、それは正直それほど素晴らしい成績ではなくGS試験時にメドーサが感じた力に比べると違和感がある


「まあ力を隠すだけの頭はあるってことか」

過去の経歴と魔鈴の力は違うが、メドーサは魔鈴がわざと力を隠して試験を受けたのだろうと結論づけていた

まあ正直言えば能力や力を隠して試験を受ける者は意外と多く、試験さえ合格すれば同業者に能力を晒すことを避ける者も結構存在するのだ

出る杭は打たれると言う訳ではないが、力や能力を秘匿するのは一般的な霊能者の常識である


「それと雪之丞ですが、やはり魔鈴めぐみの元に居るようです。 横島忠夫も美神令子の元を離れ合流したようです」

「あの坊やも一緒か……」

魔鈴の報告書のついでに雪之丞と横島の現状を聞いたメドーサは、しばし無言になり考え込む

GS試験時にいったい誰が裏で動いていたのか、メドーサはそれが気になっていた



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