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結局魔鈴は令子の提示した金額を素直に受け取って帰宅していた

下手に貸し借りを作るよりは金銭で解決したい令子の考えが理解出来ない訳ではない

魔鈴自身も令子に関わり過ぎない距離を求めており好都合だった事情もある


「何より当面の資金が確保出来たのは幸いでしたね。 もしかしたら死津喪比女の時の報酬も入ってる気もしますが」

そして令子からの報酬は、魔鈴としても喉から手が出るほど欲しかったお金であることに変わりはない

魔鈴の貯金もほとんど底を付き、最近はGS協会斡旋の仕事でようやく資金稼ぎを始めた段階であり本当に助かったのが本音だった

令子としては今回の一億で死津喪比女絡みの貸し借り無しにしたいのだろうが、期待して無かった分だけ魔鈴としては有り難かったのである


「まあそれでも資金に余裕があるとは言えませんが……」

予期せぬ一億が手に入った魔鈴だが、オカルトの研究やアイテム開発はとにかくお金がかかるのだ

アシュタロス戦まで一年もない状況ではお金より時間が貴重であり、アシュタロス一派との戦いに備えてカオスの研究と開発には膨大な資金が必要になる

まあ実際のところ魔法薬やお札など製作して売ればお金は比較的簡単に作れるのだが、必要以上に目立てば面倒事も増えてしまう

魔鈴としてはアシュタロス戦が終わればGSを本業にするつもりは全くなく、雪之丞にでも事務所を譲って自分は横島と平和な生活に戻りたかった

ルシオラやタマモなど懸案事項は幾つかあるが、オカルトに関しては未来のように副業程度の関わりが理想だと考えているようである


「何はともあれマリアの強化費が出来ましたね」

さてそんな今回の一億の使い道は、事務所の運営費とマリアの強化費に充てられることになる

特にマリアの強化は急務であり、未来でカオスが十年近くコツコツと研究強化したことをこの時代でも行う必要があったのだ

魔鈴はさっそくカオスに頼まれていたマリアの強化に必要な物資の買い付けを急ぐことになる



「あの女一体何者なのかしら?」

一方魔鈴が帰った美神事務所では、令子が指輪を眺めながら魔鈴のことを考えていた

今回の件で令子は奇しくも魔鈴を冷静に見る時間と機会があった

そこで感じたのは言葉に出来ないような違和感である


「百歩譲って現代の魔女の名に相応しい技術はあるってのはいいとしても、横島クンとの関係は違和感があるわ」

突然の霊能力開花と小竜姫の存在により周囲がなんとなく納得した横島の変化と魔鈴と魔鈴の関係が、やはり令子は納得がいかない

具体的に説明しろと言われても困るが、何かがおかしいと直感的に感じることは確かなのだ


「まあ、私には関係ないんだけどね」

どうしても横島と魔鈴が気になる令子だったが、冷静に考えると二人が何を隠していようが関係ないと自分に言い聞かせるようにつぶやく

今回のおキヌの件に関しては魔鈴の行動に怪しい部分が無かっただけに、令子としてはここで追求する必要がなかった

未来と違う形で横島と別れた令子だが、やはり二人の縁はそう簡単に切れるモノではないのかも知れない



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