一方おキヌが目を覚ましたのは次の日の午後だった

体調もよく笑顔も見せたらしいが、やはり昨日までの記憶を全て思い出せなくなっていた

昨日からおキヌをずっと見守っていた氷室父と令子は幽霊だった過去を隠し、おキヌが階段を踏み外し頭を打ったとの架空の怪我を作り上げ一時的な記憶の混乱だと告げる

これに関しては唐巣やカオスも交えた昨日のうちに話し合いをした結果であり、病院側にも協力を要請しておキヌに真実を全て隠されていた

ちなみに幽霊だった事に関しては未来の時も隠されており、未来ではおキヌの精神の安定と今後の平和な生活の為に令子と横島は目を覚ます前におキヌの前を去っている

令子と横島が生き返ったおキヌを見たのはおキヌが学校に通った後近くから見守るだけだった理由は、記憶の混乱などによる精神の不安化を令子が危惧した為であった

令子としてはおキヌの記憶が戻る可能性も含めて直接会いたい気持ちはあったのだろうが、そのまま普通の人として幸せになる事も願っていたようである


ただ今回に関しては唐巣の存在やカオスにより今後の経過を注意深く見守る必要性を指摘されたため、おキヌは中学卒業後ＧＳを目指して令子の事務所で下宿していたとの架空の経歴も用意されている

ちなみにおキヌの経歴偽装の為に美神事務所にはおキヌの部屋が急遽用意され、服や私生活の品々は六道家に頼んでわざわざ新品でない物を用意したほど徹底されていた

今後記憶が戻るか戻らないかは不明だが、当分は偽の経歴で様子を見る事になっているのだ


余談だが令子がおキヌを預かる件は、実は横島は基本的には賛成ではなかった

今後令子が巻き込まれるだろう事件を考えるとおキヌを令子から離したいもと考えていたのだが、唐巣がおキヌを令子に預ける事を望んだ為に横島や魔鈴には反対出来なかった経緯がある

加えておキヌの今後に関しては霊体と肉体の同調のズレの他にも、別の問題が発生する可能性もゼロではない

唐巣以外のエミやカオスや魔鈴ですら、おキヌが霊能者に保護されるのは必要不可欠だとの意見がある以上横島がひっくり返す事は不可能だった

この件に関して横島は魔鈴やカオスと話し合いもしたが、遅かれ早かれおキヌの記憶が戻ればおキヌが再び美神事務所に来る可能性が高い以上仕方ないとの結論になっている



「おキヌちゃんが目を覚ましたってさ」

さて横島がおキヌの目覚めを聞いたのは学校の教室だった

唐巣を通して魔鈴や横島達にもすぐに連絡が入り、学校に居たピートとタイガーも目を覚ましたと聞き安堵している


「やはり記憶は思い出せませんか」

「ひとまず目を覚ましてよかったですジャー」

ピートもタイガーも記憶を思い出せない件は残念そうだが、それでも今は反魂の術という奇跡の技でおキヌが生き返り目を覚ましたことを素直に喜んでいた

未来を知る横島達を除けば、最悪の場合はこのまま眠り続ける可能性もあると考えていたのだ

現代の科学でも解明が済んでない脳細胞などが全て元通り復活するかなど、誰にも解らなかったのだから