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「久しぶりの実戦を終えた気分はどうじゃ?」

夕食も終わり雪之丞が帰宅した頃、横島と魔鈴はカオスを交えて今回の一件について話しを始めるが笑顔が見えるカオスとは対照的に横島とは魔鈴の表情は微妙である


「俺達には合わないよ。 やっぱり美神さんとは根本的に違うんだろうな」

久しぶりの命を賭けた実戦は横島と魔鈴に様々な教訓や課題を残したが、今一番感じてる事はやはり横島と魔鈴には戦いは合わないとの想いだった

それは戦う力の問題ではなく心の問題なのだろう

例えどれだけ高い報酬を貰ってもあんな危険な戦いなどしたくないのが本音なのだ


「人は一生のうちで何度か戦わねばならない時がある。 おぬしらのその時は今なのじゃろう。 未来が欲しければ戦って勝ち取るしかない。 それが世界の理じゃからのう」

実戦を終えて今後に頭を悩ませる横島と魔鈴に、カオスは静かに諭すように己の考えを話していく

今も昔も未来を欲しければ戦って勝つしかないのだ

それは直接的な戦いから間接的な戦いへと時代と共に変化しているが、根本的なモノは古来より大差ない


「分かってるよ」

「お前にもう少し野心があればな。 横島よ、野心は必ずしも悪いモノではないのだぞ」

カオスの言葉の意味に横島は分かってると言葉少なく答えるが、カオスはそんな横島に野心が足りないと告げる

元々異性に対しての欲望は大きかった横島だが、反面で人としての野心は少ない男だった

かつて『美人な嫁と退廃的な生活をしたい』と言い切ったことからも分かるように、横島には功名心や出世欲が欠けている

カオスはそれが横島の長所であると同時に欠点だと考えていた


「興味がないよ。 俺はただ失ったモノを取り戻したいだけなんだ」

野心などないし興味もないと言う横島は、失ったルシオラと未来での生活を取り戻すことしか頭にない

そんな横島にカオスは僅かに残念そうな表情を見せる


(横島よ、お前の力と才能があれば世界を変えられるやもしれぬのだぞ)

自分の大切なモノに対しては何があっても取り戻したいと考える横島だが、逆に言えば興味のないモノには本当に興味がない

横島の力と才能をよく理解してるカオスは、それを自分自身と世界に向けない横島が残念に思えてならないようだった


(お前が野心を持てばのう……)

かつてルシオラの愛で化けたように、野心を持てば横島は再び化けると考えるカオスはその先を見てみたいと考えるが難しいとしか言いようがない


「それより次はハーピーなんだけどさ」

「ワシも直接見てないから知らんが、人工幽霊の結界に入れん程度の魔族なら自分でなんとかして欲しいんじゃが……」

野心の話には興味がないと言う横島は早々に次に起こるはずの事件に話を進めるが、カオスとしてはハーピー程度は令子が自分でなんとかして欲しいと考えているようだ


「ですが、放置するのも問題ありませんか? 万が一美神さんが負けて魂ごと結晶を持ち去られると大変なことになります」

「無論監視は必要じゃろう。 結晶だけは渡す訳にはいかん」

カオスはハーピー戦での介入は否定的だが、魔鈴は令子が万が一負けた場合を心配しており最低限監視は必要だとの結論になる


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