スリーピング・ビューティー!!

(いくらオカルトが全盛期の時代とはいえ、あれほどの魔女が何人居たのやら…… 百人も居れば国が傾くわよね)

その頃令子もまた魔鈴のことを考えていた

ビルの除霊と今回見せた魔鈴の実力は桁が違うのは令子も認めるしかない

しかしあまりにも凄すぎる技術には疑問も浮かんでいく


(失われた魔法を僅か数年で実戦レベルまで復元したなんて人間技じゃないわね)

魔鈴の魔法は実験レベルを越え実戦レベルに達している

僅か数年で失われた魔法を復元して実戦レベルまで完成させたその技術力に、令子は寒気を感じるようだった

もし仮に魔鈴の技術の一部でも公開すれば、世界のオカルト業界は良くも悪くも変わらざるおえないだろう

しかしそれは既存の宗教や権力にまで絡みとても危険なことだった


(まあ魔鈴の危険はどうでもいいとしても、横島クン達が以外とくせ者ね)

魔鈴の危険は関係ないので興味ないようだが、令子はすでに魔鈴の魔法の僅かな弱点を見抜いている

実は魔鈴が魔法を使う際に呪文の詠唱に僅かな時間が掛かることが弱点なのだが、現状だと横島と雪之丞とマリアがその弱点を埋めているのだ

バトルジャンキーの雪之丞が前線に飛び出して横島とマリアがフォローに回って、三人で敵を引き付けてる間に魔鈴は魔法を使う時間が得られると見ていた

ただでさえ凶悪なほどの魔法を使う魔鈴に横島達三人が前線を固めたら並の妖怪や魔族では相手にならないだろう

横島は元より雪之丞も魔鈴も令子は単体なら勝てる自信はあったが、集団だと勝てる気がしなかった


(商売敵確定ね)

今回は共闘した令子と魔鈴だが基本的には商売敵である

今後魔鈴がどんな方針でGSをやるのかは知らないが、実力的には令子の商売敵になることが確実だった

まあ横島と魔鈴は令子のような危険な依頼を受けるつもりなど全く無いのだが、令子が知るはずはない訳だし

結局それぞれがいろいろな想いを抱えたままその日は過ぎてゆく



「私、生きたいです」

次の日一晩考えに考え抜いたおキヌが出した結論は、生き返りたいというものだった

記憶を失う恐怖は今も胸にあるが、それと同じくらいに令子や横島と同じ時代を生きたいという想いも確実にあるのだ

道士や姫や令子や横島など、みんなが作ってくれたこのチャンスを捨てることはおキヌには出来なかったのである


「わかったわ。 後のことは心配しなくていいのよ。 全部私がなんとかするわ」

希望と不安の入り混じったおキヌを令子は優しく抱きしめ、力強い口調で大丈夫だからと言い切る

今まで数々の修羅場をくぐり抜けて来た令子の絶対の自信の表情に、おキヌの表情もまた緩んでいく


「皆さん今回は本当にありがとうございます。 私、みんなに貰った命を無駄にしたくないです」

令子と話が終わると唐巣やエミや魔鈴や横島達など、今回参加したメンバーにおキヌは深く頭を下げると心から感謝の言葉を語っていた

唐巣も魔鈴もエミも、今回は仕事以上の危険を冒して死津喪比女を倒したことは変わらない

令子の元で働いて来たおキヌは、それがいかに大変で貴重かを理解している


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