その後も横島はいくつか質問を受けるが、当たり障りのない答えに終始していた

まあエミとしては興味本位で聞いただけであり、深い意味はないようだ

ただ令子が戻って来ると微妙に空気が重くなるのは気のせいではないだろう

横島と魔鈴とは特に用が無ければ会話をしない令子だったが気になることには変わりないらしく、時折探るような視線を二人に向けている


（まさかこうして美神さんと一緒に居る機会があるとは思いませんでしね）

一方相手が気になるのは魔鈴も同じだった

元々魔鈴と令子は個人的な付き合いなどなく、会った回数は数えるほどしかない

こうして何の話をする訳でもなく一緒に居る機会は始めてだったりする

未来では横島の決別以来因縁めいた関係ではあったが、お互いに相手をよく知らないままだった


（もっと世の中をナメてると思っていたのですが……）

未来はともかくこの頃の令子は世の中をナメてるのではと魔鈴は考えていたが、今見た感じでは本質的には思っていたよりはまともな人間である

随分失礼なイメージだが、横島の過去の話やシロや小竜姫などの友人から聞いた話は目茶苦茶だったのだから仕方ないだろう

妙神山の試験でズルしたり、何か問題が起きると金で解決していたと聞くといい印象を残す方が難しい


（下手な野心がない分、母親よりはいいのかも知れませんね）

本質的にはまともでも行動は非常識と言えば非常識な令子だったが、下手な野心がない分だけ他人には害にならないと魔鈴は思う

あまり関わるとかつての横島のように散々な目に会うのかもしれないが、関わらなければ害どころか人間に危険な妖怪や魔族と戦える貴重なＧＳというだけである

他人に必要以上に干渉されるのを嫌う代わりに他人にも干渉しない令子は、距離感さえ間違わなければ問題性は低かった

その点母親の美智恵は令子よりは常識や正義感があるが、代わりに野心もまたある

美智恵の弟子である西条もそうだが、正義感や常識がある分だけ他人にもそれを求める節があるのだ

当然それは悪いことばかりではないのだが、美智恵や西条の理想の為に横島や自分が利用されるのは御免だった



「横島サン、ワッシはついていけないですケン」

魔鈴と令子が静かなる緊張感を漂わせてる頃、横島の元には早々に音を上げたタイガーが来ている

実戦形式の手合わせと言っても雪之丞とピートの実力にタイガーは着いていけるはずもなかった


「何百年も生きてるピートと三度の飯よりバトルが好きな雪之丞に、普通の人間が勝てる訳ないだろう」

タイガーは疲れたようで縁側に寝そべるが、横島は雪之丞とピートに張り合うタイガーのやる気に驚いていたりする

この時代のタイガーはまだやる気と自信が結構あったのだと、横島は始めて知っていた


「次のＧＳ試験に向けて強くなりたいんですケン」

「ＧＳ試験受けるなら強くなる前に精神感応のコントロール何とかしろよ。　あれさえ上手く使えば十分勝てるだろうに」

すでに次のＧＳ試験を目指しているタイガーに、横島はサラっとダメ出しをする

未来の試験の時もアレだったが、今のタイガーはあの時よりも更に精神感応のコントロールが甘かった

中途半端に雪之丞やピートを真似るくらいならば精神感応を何とかする方が先である