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「終わったようじゃな。 さてワシは帰るとするか。 詳しい事情は上の神社の連中に聞いてくれ」

一方氷室家でお茶を飲んでいたカオスだったが、死津喪比女の死を確認するとろくに説明もせぬまま帰ってしまう

今のカオスにとって時間は何より貴重であり、アシュタロスが数百年を賭けて準備した行動を僅か数ヶ月で阻止するのは簡単ではない

彼はすでに次の事件に向けて動き出していた



「お久しぶりっす。 美神さん」

そして神社では泣きじゃくるおキヌとそれを受け止める令子の前に、ワンダーホーゲルが現れる


「あんた…!?」

驚きの表情でワンダーホーゲルを見つめる令子は、途中から頭に血が上ってすっかり彼の存在を忘れていたようだ


「彼は……」

「美神さんがおキヌちゃんの代わりに神様にしたワンダーホーゲルっすよ」

突然現れたワンダーホーゲルに唐巣もまた驚きの表情をみせるが、横島が説明すると複雑そうな表情に変わる

地元への相談もなく勝手に山の神を交換するなど非常識としか思えないが、だが逆の視点で考えると令子の非常識が無ければおキヌは今だに救われなかったかもしれない

あの時令子がおキヌとワンダーホーゲルを交換しなければ、恐らく魔鈴が疑問に感じることもなくおキヌは今だに山の中で一人ぼっちだったろうと思うのだ

そう考えると今回の令子の非常識な行動を一概に非難することは出来なかった


「おキヌちゃんを生き返らせるなら自分も力になるっす」

「……えっと……私……もう少しこのままで居たいって言うのはダメでしょうか?」

さて現れたワンダーホーゲルは挨拶もそこそこにおキヌ復活に行こうと言うが、当のおキヌが復活に消極的なことに理由を知らない雪之丞とタイガーは驚いてしまう


「なんで?」

「恐らく記憶に関してでしょう。 幽霊の記憶とは魂に刻まれた記憶。 それは不確定なものなんですよ。 朝起きると夢を忘れるように、幽霊の時の記憶も……」

この場で幽霊の記憶について知らないのは雪之丞とタイガーだけなようだった

不思議そうな二人に魔鈴が説明をすると二人は黙ってしまう


「とりあえず美神君達は少し休んでいたまえ。 私は封印の場所を調べてくるよ」

記憶の問題で悩むおキヌに誰も声をかけられなかった

未来ではぎりぎりのタイミングだった為に横島と令子で強行したが、今回はおキヌが安定してるため下手に急ぐ必要もない

結局おキヌには考える時間が必要なことから、今回あまり役に立たなかった唐巣は自分が調査すると言い神社の地下の封印の堰に向かう


「実物は凄いですね」

その後地上に残ったのは令子とおキヌとのみで、残りの全員は地下の封印の堰に来ていた

少し二人だけにしようと配慮したのだが、実際に見た地下の施設に唐巣達は驚きの表情を見せる


「まさか神社の地下にこんな施設が……」

そして流れでなんとなく唐巣達に着いて来た氷室一家は、神社の地下の封印の堰に驚きを隠せないでいた

正式な引き継ぎもない現在の神主は正直あそこまで危険な妖怪が本当に居るとは半信半疑だったようだ



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