スリーピング・ビューティー!!

「凄いな。 あれだけ厄介な相手を一撃だとは……」

「エミさんの奥の手ってとこだろうな」

「自分より霊的に格上の相手への呪術は恐ろしいほど難しいんですよ。 同じことを出来る霊能者は世界にも何人も居ないでしょうね」

あまりの強力な呪術に令子が固まる中、横島達は平然とした様子で素直に感心していた

特に直接戦闘力の低さからエミを若干甘く見ていた雪之丞は、始めて見る呪術の力に驚きを隠せないようである

横島と魔鈴でさえこれだけの呪術を見るのは始めてであり、特に魔鈴はエミの実力と危険な賭けをしてまで呪殺した覚悟にプロの凄まじさを改めて感じていた


「見た目で判断したら確実に痛い目を見るな」

「お前も相変わらずだな。 美人を見て強いか弱いかを気にする思考が理解出来ん。 美人とは仲良くするもんだろう」

「それは横島さんだけなんでは……?」

相手が女性でも等しく力で相手を判断しようとする雪之丞に横島は呆れた口調で言葉を返すが、ピートとタイガーは魔鈴の前で女好きな本音を語る横島に驚いていた


「おたく達には緊張感がないワケ?」

一方呪殺という最も忌み嫌われるモノを見せたにも関わらず、緊張感なくいつもと変わらない横島達にエミは何故か疲れた表情をしてしまう

いろいろ心の葛藤があったにも関わらず平然とする横島達を見ていると悩んでた自分が馬鹿馬鹿しくなる気がした


(横島さん……?)

そして緊張感がない横島達とそんな横島達のせいで緊張感が崩れていくエミを見ていたおキヌは、何か僅かな違和感を感じている

まるでエミの苦悩と緊張感を晴らすかのように重苦しい空気をぶち壊した横島の行動が、おキヌには偶然とは思えなかったのだ


(まさか、わざと……)

以前も度々空気をぶち壊しては令子に怒られていた横島だったが、今回のタイミングはあまりに出来すぎな気がしている

それだけエミの表情は複雑そうだったのだ



そんなエミの緊張感が途切れてようやく緩やかな空気が辺りに流れ出した頃、再び地震が氷室神社を襲う

グラグラと微弱な揺れはどんどん強まっていき、地下から大きなプレッシャーが上がってくる


「なっ!?」

その事に即座に気付いたエミ・令子・唐巣は、先程の呪術を持ってしても死津喪比女が倒せなかったのかと再び緊張感が走っていく


「奴が来るぞ!」

令子達が緊張感を高める中、バンダナの心眼も目を開き死津喪比女の襲来を告げる

それは横島達にとって予想通りの結末だった

恐らく死津喪比女は全ての力を使って生き残る事だけに全力を傾けたのだろう

実は結果的ではあるが、横島達が何度も花や葉虫を倒した事も無駄ではなかったのである

魔鈴の霊力切れを狙い大量の花や葉虫を送った結果、死津喪比女の力を僅かに落とす事には成功していたのだ

その僅かな差がエミの呪術を防げない原因になるとは魔鈴も死津喪比女も想像もしない事だった



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