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「おキヌちゃん……」

「全部思い出したんです。 私……、何にも知らなかったからみんなに迷惑かけて……」

涙を浮かべるおキヌはそれでも笑顔を絶やさずに令子を見つめている

幸せな夢から覚める時が来たのだとおキヌは覚悟してるようだった

その時少し離れた空で死津喪比女が魔鈴により爆破され、爆風が氷室神社にまで届く

そのあまりの光景に道士とおキヌは驚きの表情で空に視線を送る


「横島……さん?」

それはおキヌにとって予想もしない光景だった

あの横島が魔鈴達と一緒に魔法のほうきで空を飛び、死津喪比女を次々と倒しているのだから

それが根本的な解決にならないと道士は理解しているが、それでも僅か数人で死津喪比女を倒して行く姿は驚くしかない


「ピート、あいつらを一端呼び戻して! ここの結界ならしばらく持つはずだわ」

「はっ、はい」

一方令子は安全地帯が出来たことにより一度体制の立て直しが必要だと考え、魔鈴達を呼び戻そうとしていた

現状で死津喪比女に対抗出来る魔鈴が力尽きるのは流石にまずかったのだ

無論エミの呪術で倒せる可能性もあるが、現状で選択肢を狭めることはする訳にはいかないのである



「横島さん、魔鈴さん一端引いて下さい!」

そして死津喪比女と戦っていた横島達だったが、いくら倒しても次々に現れる死津喪比女に流石にきつそうな表情を見せていた

やはり単純な物量では死津喪比女に分があるし、久しぶりの実戦は二人の思った以上に精神的な疲労を与えている

ピートが呼び戻しに来た時、横島と魔鈴は疲労からくるリスクを考えて多少山や森に被害が及ぶのを覚悟してでも、魔法で死津喪比女を地上に引きずり出そうかと悩んでいた頃だった


「あんな奴相手にいつまでも戦うのは無理だな」

ピートの声により令子達が氷室神社に到着したのだと理解した横島達は、死津喪比女の追撃を撃退して氷室神社の結界内に退避することに成功する

結界内に入ると雪之丞は疲れたように地べたに座り込み一息つくが、流石の雪之丞も次から次へと現れる死津喪比女と戦うのはきついらしい

まあ魔鈴の力を中心に戦い雪之丞はサポートだったのだが、それでも死津喪比女は強くマリアのサポートが無ければ雪之丞は何度か捕まっていた可能性があったのだ

雪之丞自身足手まといにならないように戦うのが精一杯だった


「……おキヌちゃん」

「横島さん……」

一方の横島と魔鈴は疲れた表情を見せつつもおキヌと再会していた

全てを思い出し言葉が出て来ないおキヌに、横島もまた複雑そうな表情を隠せない


「横島さんも美神さんもみんなも私の為に…… 本当にありがとう」

おキヌは込み上げて来る感情を抑えながらゆっくりと語っていく

あの令子が毛嫌いするエミや魔鈴と共にこの場に居る意味をおキヌはよく理解している

特に魔鈴に対してはGS試験後に散々荒れていただけに、協力してることが信じられないほどだった

そして、最後に一目でいいから会いたかった横島がこの場に居て会えたことがおキヌには何より嬉しかった


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