スリーピング・ビューティー!!

「この……くされ妖怪が!!」

横島達の様子とは正反対に緊張感溢れる戦いをしていた令子だったが、とっさに精霊石を用いて掴んでいた腕を破壊していた

それに合わせるように唐巣が援護をして令子は死津喪比女と距離を開けるが、死津喪比女は相変わらずダメージなど感じないような笑みを浮かべている


「無駄だと言うのが分からんのか? 行け葉虫ども」

まるで強者が弱者をいたぶるような表情を浮かべる死津喪比女は、令子達の緊迫した表情を楽しんでいるようであった

死津喪比女は周囲を取り囲むように配置した葉虫で令子達に攻撃を始める


「チッ……」

とことん舐められてる状況に令子は舌打ちをして苛立ちを隠せないが、後手に回った以上不利なのは変えようがなかった

本来ならば適当にあしらいつつ一時撤退でもしたいところなのだが、令子とエミは道具の大半が車に積まれており撤退すると攻撃オプションが限りなく少なくなってしまう

加えて唐巣やら魔鈴やら人数が多いために意思疎通が出来てない現状が地味に影響している

下手に個別に撤退してバラバラになったところを個別に攻められたら、令子達は圧倒的に不利であった

状況的には良くないが、ここで踏ん張るのが最善だと令子は判断するが……


「あんた達も見てないで手伝いなさいよ! 元々はあんた達が持って来た一件でしょうが!!」

相手が死津喪比女から葉虫に変わったことで互角以上に戦いをしていた令子だったが、いつの間にか戦ってるのが自分達三人だけなことに気付きムッとしたように傍観者となっていた横島や魔鈴達を睨む


「だとよ。 どうするんだ?」

令子の言葉にピートとタイガーは慌てて参戦するが、雪之丞は予想以上に冷静だった

まあ令子にあごで使われるのが嫌だっただけかもしれないが……


「本当はもう少し安定した場所で戦いたかったのですが、仕方ありませんね。 先程美神さんを捕まえた相手には気をつけて下さい」

雪之丞にどうするか聞かれた魔鈴は、少し悩み参戦することを決める

魔鈴もまた横島同様に介入のタイミングがなかったのだが、魔鈴の場合は同時に令子と戦いから死津喪比女の実力を計っていた

死津喪比女クラスの実戦など数えるほどしか経験がない魔鈴なだけに、彼女は慎重に慎重を期している


「マリア、雪之丞を頼むわ。 あいつ無茶しそうだからフォローよろしく」

「イエス・横島さん」

魔鈴の言葉により前線に飛び出した雪之丞だったが、横島はそのフォローをマリアに頼んでいた

正直今の雪之丞は一対多数の戦いは少しきつく、死津喪比女が相手だとフォローがないと危険であった


「偶然か必然か分かりませんが、【地の魔法】は使えなくなりましたね。 一番簡単だったんですが……」

「未来を変えるのも楽じゃないってことか」

最後に魔鈴と横島は二人にしか聞こえない声で一言だけ言葉を交わして動き始める

魔鈴は対死津喪比女用にいくつかの策を用意していたが、それにはそれぞれに使用する環境的条件が必要だったのだ

最も理想だったのは周囲に何もない野原のような場所なのだが、まあ森な中で戦うよりはマシな程度の状況だった



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