スリーピング・ビューティー!!

そのまま横島達と令子達が合流したまではいいが、正直戦うには不利な場所だった

道路は未舗装で道の左側は崖の壁で逃げ道などないし、右側は数十メートル下まで奈落の崖なのだ

しかし移動しようにも先程のような崖崩れを起こされたら危険なので、ここで迎え打つしかない


「最近妙な連中が地上を嗅ぎ回っていたかと思えば、やはり霊媒師か……」

辺りを警戒していた一同の前に現れたのは一体の死津喪比女と十匹ほどの葉虫だった

地中からするりと伸びて来たその姿は、かつて横島が見た死津喪比女と同じである


「あんた何者? 悪いけど私は今忙しいの。 死津喪比女って奴探してるのよ。 あんた知らない?」

「わしを探してどうするつもりえ。 まさか殺されに来たのか?」

現れた死津喪比女に対して淡々とした口調で話し掛けていたのはもちろん令子である

目の前の死津喪比女からは明確な敵意も感じており、崖崩れの件と合わせて限りなくクロに近いのだが一応確認をしたらしい


「あんたを退治に来たのよ!!」

自身の問い掛けに挑発するような態度で答えた死津喪比女に、令子は先手必勝と言わんばかりに破魔札をたたき付けた

込められた霊力に反応して炸裂する破魔札を全く避けようともしない死津喪比女は破魔札の爆発により身体の三分の一ほど失ってしまうが、顔色一つ変えずに令子を見つめている


「人間とは進歩のない生き物よの。 そのようなモノが通じると本気で思っておるのか?」

身体の三分の一ほどを失っても顔色一つ変えない死津喪比女に令子やエミ達の表情が変わる

令子自身も破魔札程度で倒せるとは思ってなかったが、相手の力や能力を知るバロメータにはなるはずなのだ

しかし死津喪比女は自身のダメージなどまるで感じないかのごとく令子を見下した瞳をしていた


「ナメんじゃ……」

死津喪比女の態度に苛立ちを感じたのか令子は再び破魔札を手に持とうとするが……

突然伸びてきた死津喪比女の腕によりあっさり捕まってしまう


「美神君!」

「令子!?」

そのスピードに令子や唐巣達は驚愕していた

死津喪比女は特別早く動いたつもりなどないのに、戦闘体制の令子をあっさりと捕らえてしまったのだから



「なんか乗り遅れた感じだな」

「他人のペースで戦うの嫌いな人だからな~」

一方令子・エミ・唐巣の三人が前線で死津喪比女と対峙するのを、横島達は後方から見ているだけだった

別に横島達も好きで見ている訳ではないのだが、死津喪比女が霊力の強い令子達の前に現れただけなのだ

横島と魔鈴は霊力を隠してるし、雪之丞も単純な霊力は令子に及ばない

結果的に死津喪比女にザコだと判断されて相手にされてないだけだった

横島はともかく雪之丞は飛び出すタイミングを計っていたが、飛び出す前に令子が捕まってしまったのだ


「横島さん、相変わらず緊張感ないですね……」

そして唐巣達と同じく死津喪比女の力に驚愕するピートとタイガーは、まるで傍観者のような横島に軽くため息をはいてしまう

以前の横島をよく知る彼らは、横島が戦うつもりがあるとは全く思ってないようだった


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