スリーピング・ビューティー!!

そのまま電車とバスを乗り継いで人骨温泉に到着した横島達だったが、人骨温泉では例によって令子とエミが微妙な空気を作っていた

一瞬そのまま見なかった事にして帰りたくなる唐巣だったが、そんな本心を全く顔にも出さずに声をかけていく


「とりあえず氷室神社に行ってみようか。 古文書通りならどこかに封印の施設があるだろうからね」

ようやく集まったメンバーだったが、死津喪比女の除霊に入る前に氷室神社に向かうことにする

実は令子のみならず唐巣とエミも独自に調査に来ていたが、誰も封印に関係した場所を発見出来なかったのだ

再封印は不可能としても死津喪比女の手がかりは欲しい

結局一同は氷室神社に向かうことになるが、車という移動手段のない横島達と唐巣がどうするかが問題になる


「私達ならば大丈夫ですよ。 飛んで行きますから」

横島達がどうやって氷室神社まで行くかで話が止まりそうになるが、魔鈴はパチッと指を鳴らすと魔法のホウキを召喚した


「そういえば魔女は魔法のホウキで飛べるんだったわね」

「使える魔法のホウキが現存するの!?」

魔鈴が魔法のホウキを三本召喚して横島と雪之丞にも渡すと、エミと令子の表情が一変してしまう

その表情は驚きと共に一本欲しいと分かりやすく顔に出ている


「自作のホウキですよ。 流石に中世の物は文化財ですし」

現在世界に現存する中世の魔法のホウキは一本のみであり、かつて令子が乗った青き炎と呼ばれる魔法のホウキのみだった

実はもう一本炎の狐と呼ばれる魔法のホウキがあったが、あれは音速の壁により壊れてしまった訳だし……


「十億でどう!?」

「令子、ズルイわよ! 十二億出すわ!!」

魔鈴は一言も売るなど言ってないのにも関わらず、令子とエミの二人は勝手に競りを始めてしまう

そんな二人に唐巣は頭痛を感じたようにため息をつくが、二人が簡単に止まるはずなどない


「これそんなに価値があったのか?」

「空飛べるアイテムなんて他にないからな。 移動とかやばくなったら逃げるのにも使えるし、精霊石に何億もかけるならそんだけの価値があるんだろ」

先程までピリピリしていた令子がそんな事どうでもいいと言わんばかりに、目を血走らせて値段の交渉する姿に雪之丞・ピート・タイガーは引き攣った表情を浮かべている

特に雪之丞は魔鈴や横島が日頃普通に使ってるのを見てただけに、信じられないようだ


(やっぱホウキ無しで飛ぶのはやめた方が良さそうだな)

魔鈴やエミとの確執なんて吹き飛んでしまった様子の令子に、横島は魔法のホウキ無しで空を飛ぶのはやめようと心に誓う

実は横島と魔鈴は分類的には神魔に近いので魔法のホウキ無しでも簡単に飛べるのだが、目立ち過ぎない為にわざわざ飛行用の魔法のホウキを作成していたのだ


「あの……、魔法のホウキは売るつもりがないのですが……」

一方簡単に目の色が変わった令子とエミに魔鈴は困惑気味に売らないと告げる

実はこの手の人間は予想以上に多く、魔鈴が大学に通っていた頃からよくある光景だった


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