スリーピング・ビューティー!!

「珍しいこともあるものね。 オタクが私に依頼を持ち込むなんて……」

魔鈴や唐巣との話し合いを終えた令子はそのままエミの事務所を訪れていた

相変わらずピリピリした空気を漂わせる二人だったが、それでも話は問題なく淡々と進んでいるのは流石と言えるのかもしれない


「報酬は言い値で構わないわ」

独自に調べた死津喪比女に関する資料を渡した令子は、死津喪比女を殺せるだけの強力な呪いのアイテムの制作をエミに依頼していた

金に糸目を付けないから最強の呪いが欲しいと告げる令子の霊感と行動は正しいと言えよう

魔鈴と違い正確な事前情報は少ないだけに令子の強さの理由が分かる行動である


「通常の攻撃で退治出来ない可能性が高い訳ね。 確かにこの情報だとオタクよりは私向きなワケ」

魔鈴の情報を元に死津喪比女を調査した令子の結論は、自分には向かない依頼だとの結論だった

三百年前の道士がわざわざややこしい方法で封じた理由は正確には判明してないが、通常の除霊方法で退治出来ない可能性の方が高いのは確かである

この手の直接戦えない相手を倒すのにエミのように呪いなどの間接的な攻撃が得意なGSが必要だが、残念ながら日本にエミ以上の呪いを使えるGSは居ない

まあGSでなく殺し屋や呪い屋なら居る可能性もあるが、非合法な連中を使うならばエミの方がまだ信頼出来るとの判断だった


「一つ条件を出すわ。 私もその除霊に加えるなら引き受けるワケ」

ピリピリした表情の令子にエミが出した答えは少し意外なモノである

令子からすれば、まさか好き好んで危険かもしれない依頼に参加したいと言い出すとは思わなかったらしい


「あの魔鈴って女、なんか気になるのよね。 最近はドクターカオスと組んでるらしいじゃないの」

エミが面倒な除霊に参加しようと考えた理由は魔鈴の技術だった

はっきりいうと同業者の情報が欲しいのだ

あまり表沙汰には出来ない呪いの技術をいくつも使えるエミなだけに、魔鈴が蘇らせた失われた技術が気になるのだろう


「別に来てもいいけど、多分見ても分からないわよ」

魔鈴に興味を抱くエミに令子は先日の除霊の話を教えるが、エミはそれでも興味は変わらない

今後敵になるにしろ味方になるにしろ、直接自分の目で確かめたいのである


「じゃ、交渉成立ね。 本物の呪いの力を見せてあげるわ」

令子としてはエミが来ようが来なかろうがあまり関係ないため、安請け合いして契約してしまう

実際エミと令子は警察と暴力団の代理で何度か戦ったが、エミは人間相手に殺すような呪いは使ったことはない

実は令子自身も相手を殺す呪いを使うエミの実力を正確には知らないのだ

エミはこの機会に令子にも本物の呪いの力を見せ付けたいようである


(チッ、面倒だけどエミの力が必要なのよね)

令子が依頼を頼んだ事で気分がいい様子のエミに令子自身は苛立ちを感じているが、だからと言ってキレてしまえば意味がない

おキヌ絡みの仕事故に失敗など許されないのだ

つまらない意地を張っておキヌを悲しませる結果にだけはしたくはなかったようである


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