GS試験再び……

同じ四月の初旬、美智恵は内閣府のビルを訪れていた

『心霊現象特別対策会議』

美智恵はその会議に参加する為に、ここに来ている

会議の議題は交通機関や発電所などの国の重要施設を、どう心霊現象から守るかの議論が行われるのだ


そう…

この会議は二月に起こった、悪霊による飛行機事故の問題を話し合うための会議である

その会議も今回で5回目になり、話し合う対象を港湾施設から国家的重要施設にまで広げて議論が行われていた


「美神君、オカルトGメンはいつになれば組織の規模を拡大するのかね? 現状では居ても居なくても変わらないのだが…」

前回までに散々議論したがあまり成果は無く、議論は停滞したままである

そして今回の議題はオカルトGメンの組織に移っていた

現在の日本では唯一の公的組織だが、所管はあくまでICPOであり日本政府ではない

いわゆる責任や問題のなすり付け合いになっており、政府の組織でないオカルトGメンはいい標的にされていた


「順次拡大を計画中ですが、オカルトGメンは先進各国でも人手不足です。 捜査官は基本的に自国で発掘しなくてはなりません。 残念ながら日本ではなかなか霊能者が集まらない問題があります」

半分嫌みにも聞こえる官僚の問い詰めに、美智恵は淡々と答えている


「霊能者はGSになるのが当然ですからなぁ。 誰も好き好んで、より危険で給料の安いオカルトGメンに入る訳無いですな」

美智恵の答えは、会議に参加する関係者はもちろん理解していた

そもそもオカルトGメンの人手不足は日本だけの問題ではないのだが、欧米各国と日本の違いは国民性にある

国や社会に尽くすような愛国心など無縁の日本では、諸外国よりも特にオカルトGメンに人材は集まらなかった

GSになれる力のある霊能者が、わざわざ危険で給料の安いオカルトGメンに入る者などほとんど居ない


「高い税金をオカルトGメンには払ってるんだ。 もっと働いて貰わねば困る」

美智恵の話に仕方ないと諦め気味の人も居れば、更に美智恵を責め立てる者も居る

オカルトGメンの運営費はほとんどが日本政府が出資しており、政府には金食い虫として見られていた

ICPOの名前を盾に、高い経費を要求するオカルトGメンを良く思ってない人も多い


この辺りの考えはオカルトを理解してない者が最も多く、一枚数百万から数千万のお札が当たり前なオカルト業界を全く理解してない


「GS協会はどうなんだね?」

「協会としては協力して頂いてますが、最終的にはGS本人の意思です。 大半のGSはオカルトGメンへの協力を避けてます」

話はGS協会にも行くが、こちらは民間団体なためどうしようもない

オカルトGメンに来た依頼をGS協会経由で受けるなら協力するGSは居るのだが、オカルトGメンに出向して協力するGSは皆無と言ってよかった


GS達がオカルトGメンに関わりたがらない理由としては、アシュタロス戦にも原因がある

アシュタロス戦の活躍で一般的には一気に評価を上げたオカルトGメンだが、業界の評価はまた少し違っていた

無論オカルトGメンの実力を疑う者は居ないが、その評価以上に危険性が業界関係者の印象に強く残っている

最も危険な悪霊や魔族と戦わねばならないオカルトGメンに、好き好んで出向するGSは居ないのだ


2/38ページ
スキ