終わりと始まり

しかし、その問題が持ち上がってることを知った令子の裏工作により、その話は立ち消えになっていた

そう、GS協会の幹部クラスには令子に買収されている者や、弱みを握られている者も少なくない


令子は横島の待遇を改善するよりも、騒ぐ連中を黙らせる道を選んでいた

ある意味お金の問題では無かったのかもしれない

横島と自分の変わらぬ関係を求めた結果なのだろう



一方会議は相変わらず責任のなすりつけ合いを続けている


「あの時、美神令子への警告すら出すのを反対したのは誰でしたかな…」

互いに睨み合い責任を追及するその姿は、あまりにも情けない姿であった


「しかし…、アシュタロスを退治したことになっている美神令子に正式に警告をだせば、GS業界の不祥事に繋がる! それに母親の美神美智恵も黙って無い! あの二人がいかに汚いかみんな知ってるだろう。 正面から戦える者など協会に居ないではないか!!」

どうやら弱みを握られてるらしい人物は声を荒げて現実を訴え、その激しい言葉に会議室は沈黙に包まれる


「やはり… アシュタロス戦が原因だろうな。 スパイにされたあげく殺されかけた。 どう考えても、横島忠夫が美神親子を恨まないはずがない」

「あの魔族の娘の事もあるのでは無いか? 我々人間に味方して命を落としたのに、元から居なかった扱いにされた。 恋仲だったのだから、恨むとしたら我々も恨まれてるのでは…?」

静かな会議室で、ぽつりぽつりとつぶやくように原因を探す幹部達

横島の真意が掴めないために、その内心を推し量るがどれも決定打に欠ける


「わかってることは、横島忠夫はGSを辞めたと言うことだけか…」

話が振り出しに戻り、疲れたように重い空気が辺りに満ちてゆく


「とりあえず、若手GSの免許の問題は再検討が必要ですな… 今の制度だと協会が若手の実力や能力を把握出来ない。 不遇な扱いを受けて業界を去る者も少なくないと聞く。 第二第三の横島忠夫を出さないためにも、免許の問題は協会が主導権を握らなくては…」


結局、この日の会議で決まったことはGS免許の仕組みを再検討することだけであった

この問題は六道家を筆頭に霊能の大家や、現役GSの利害が絡むため非常に難しい問題だが…

優秀な若い人間がGSを目指さなくなることは、協会幹部の危機感を大いに刺激した


ただでさえ、霊能者は才能に左右されるため人材不足なのだ

それが霊能力の才能があっても、GSを目指さなくなると言う事態は何としてでも避けたい


一方肝心の横島と令子への対応は一切話が決まらなかった

美神親子の現在の社会的立場を考えれば、GS協会といえど簡単に手は出せない

それに美神家は六道家とも繋がるため、六道家の意向を聞かねば協会として何も出来ない

早い話が、誰も美神親子と戦う気が無いのだ


そして横島に関しては、特に動きようが無いのが現実である

GSを辞める辞めないは個人の自由なのだ

能力や功績を考えると復帰を頼みたいところだが、横島自身が何を考えてるかわからない

もし、自分達GS協会を恨んでいたとすれば、このまま去ってくれた方がいい

日本GS協会としての損失は計り知れないが、個人の腹が痛む訳でも無いし


結局、横島と令子への対応は六道家の意向次第に落ち着いていた


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