新しい生活

微妙な沈黙が辺りを支配する頃、ずっと無言だったタイガーに周りの視線は移っていた


「ワッシは… わからんです。 魔理さんはあれ以来、あの話どころか霊能の話を全くしないんですケン。 どこかよそよそしい魔理さんにどうしたらいいのか……」

魔理の話になったタイガーは、ただでさえ低いテンションが更に低くくなる

雪之丞とは違い以前と同じように会ってはいたタイガーと魔理だったが、どこかギクシャクした関係がそのままだった

互いにいろいろ悩みどうしていいかわからない二人は、変に霊能関係の話を避けたままなのである


「そっか… 悪い事しちまったな~ 元々、俺とおキヌちゃんの問題なのに…」

元々は、雪之丞やタイガー達カップルには関係無い問題なのだ

変に首を突っ込んだかおりと魔理にも責任はあると思うが、自分がおキヌとしっかり話さなかった事も原因だと思うと横島は四人に申し訳なかった


「何でもかんでも自分が悪いと思うのは最近のお前の悪い癖だな。 あいつらは自分から望んで首を突っ込んだんだ。 それにきちんと話さなかったのは、おキヌにも責任がある。 元々お前はあの二人と関係が薄いからな。 責任云々言うなら、俺やタイガーの方がある」

アシュタロス戦以来何かと自分を責めてしまう横島に、雪之丞は悪い癖だと言い切る

あの戦い以来横島は精一杯生きて来た

そんな横島よりも、横島をここまで追い込んでしまった周りに責任があると雪之丞は思う

雪之丞自身責任を感じている一人なので、影ながら横島を助けて来たのだし…


「いや、でも問題起こしたのは俺なんだし… おキヌちゃんにきちんと話してればさ…」

「結果はかわらねえだろうよ。 だいたいおキヌに何て言うんだ? 信じる事が出来ないってハッキリ言うのか? どっちにしろ、あの二人は真実を知るまで止まらなかっただろうよ」

責任を感じる横島に、雪之丞は冷静に現実を突き付ける

令子が正義で横島が悪、そんな子供じみた価値観が消えないうちは、あの二人はいずれ同じ問題を起こしただろうと雪之丞は思うのだ


それに雪之丞やタイガーとて、横島をフォローはしていた

しかし、いざ問題が起きれば横島が悪いと決め付けてしまう

今回は相手がおキヌと令子だったのも原因であるが…

良く知らない人からすれば令子は聖者のような英雄だし、おキヌは誰よりも優しい人にみえる

そんなイメージのいい二人と、最低人間のイメージが消えない横島では仕方ない事でもあった

責任と言うなら、関係者全員にあるだろうと言うのが雪之丞の考えである


「責任の話は無駄よ。 そもそも自分の行動は自分が責任を取るのが当然でしょう? 全てはあの二人が未熟だっただけ。 問題はこれからでしょ」

横島と雪之丞の話がかなり無駄だと思ったタマモは、一言で片付けてしまった


「確かにそうですね。 そもそも責任を問うのなら何処までが責任か曖昧ですしね。 ただ彼女達が真実を知るには、まだ早かったと思います」

先程からかおりと魔理を思い出していた魔鈴だったが、年相応に幼いイメージが強い

同年代とはいえ、横島や雪之丞やタイガーは年の割には苦労が多かった

おキヌや小鳩もそうだろう

それに比べると一般的高校生と変わらない二人はひどく幼くみえる

そんな二人だからこそ、あの戦いの真実とその後の複雑な人間関係を知るのは少し酷だったと思っていた


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