新しい生活
同じ頃、六道女学院はすでに春休みになっていた
普段はなかなか帰省出来ないおキヌなので、養父母に顔を見せる為に数日前から実家の氷室家に帰省している
氷室家の家族との再会を喜び笑顔を見せるおキヌだが、どこか元気が無く無理しているのを養父母やさなえは見抜いていた
そしてある日の深夜、何か眠れないおキヌは一人で縁側で星空を見ている
しかし夜空に綺麗に輝く月を見ていると、かつて令子と横島が月に行った事を思い出してしまう
(美神さんと横島さんは、あんな遠くに行ったんだ…)
かつてメドーサと戦う為に二人が月に行った事を思い出したおキヌは、思わず懐かしさが込み上げていた
(あの時も私は一緒に行けなかった… 二人が苦しみ戦う姿を、そして横島さんが落ちて行く姿を、ただ見ていることしか出来なかった)
懐かしさと共に思い出すのは、見ていることしか出来なかった悔しさである
人数の関係で仕方なかった事情もあるが、基本的におキヌは危険すぎる仕事には連れて行ってもらえない
令子としては女の子のおキヌを大切にしているからこそ連れて行く仕事を選んでるのだが、おキヌは令子や横島と共に行けないのが悔しかった
(私は美神さんや横島さんと共に戦うために……)
「眠れないのか、おキヌ」
思考の渦に飲み込まれそうだったおキヌだったが、突然かけられた養父の声に現実に引き戻される
「お義父さん…」
「何か悩み事か? 頼りないかもしれないが、私はお前の父親だ。 苦しい時や辛い時は頼っていいんだよ」
養父はおキヌの隣に座り、同じく星空を見つめながら優しく話していた
そんな養父の優しさにおキヌは、言葉に出来ない感情が溢れて来る
「生きるって難しいですね。 幽霊の頃や少し前までは、生きる事はとっても楽しく素晴らしいと思ってました。 でも…、今はわかりません」
溢れて来る感情を抑えて涙がこぼれないように笑顔を作って語るおキヌだが、養父にはそんなおキヌが痛々しく見えていた
「……先日、横島さんが美神さんと私の元を去ったんです。 今まで当たり前だった日常、変わるはずが無いと思っていた未来… 全てが変わってしまったんです」
無言で話を聞く養父に、おキヌは自分の中にある想いを少しずつ言葉にしていく
「いつの間にか、遠い存在になってました。 気が付いた時には手が届かないほど… 私どうしていいかわからなくて……」
途中からおキヌの声は震え始めていた
必死に堪えていた感情が溢れていくように、静かに涙を流す
「そうか…」
一言つぶやいた養父が優しくおキヌを抱きしめると、おキヌは声を殺して泣き続けた
悲しみや苦しみを全て受け止めるように抱きしめる養父と、泣き続けるおキヌの姿は本当の親子のように見える
そして離れた場所では、養母とさなえがそんな二人の姿を密かに見つめていた
「あの馬鹿男! 今度会ったらタダじゃおかねぇだ!!」
「やめなさい、さなえ。 出会いと別れは仕方ないのよ」
「でもっ!」
「彼が何故去ったのかわからないけど、それなりの理由はあると思うわ。 それにあなたが何か言っても、何も変わらないわよ」
横島に対して怒りを爆発させるさなえだが、養母は冷静だった
普段はなかなか帰省出来ないおキヌなので、養父母に顔を見せる為に数日前から実家の氷室家に帰省している
氷室家の家族との再会を喜び笑顔を見せるおキヌだが、どこか元気が無く無理しているのを養父母やさなえは見抜いていた
そしてある日の深夜、何か眠れないおキヌは一人で縁側で星空を見ている
しかし夜空に綺麗に輝く月を見ていると、かつて令子と横島が月に行った事を思い出してしまう
(美神さんと横島さんは、あんな遠くに行ったんだ…)
かつてメドーサと戦う為に二人が月に行った事を思い出したおキヌは、思わず懐かしさが込み上げていた
(あの時も私は一緒に行けなかった… 二人が苦しみ戦う姿を、そして横島さんが落ちて行く姿を、ただ見ていることしか出来なかった)
懐かしさと共に思い出すのは、見ていることしか出来なかった悔しさである
人数の関係で仕方なかった事情もあるが、基本的におキヌは危険すぎる仕事には連れて行ってもらえない
令子としては女の子のおキヌを大切にしているからこそ連れて行く仕事を選んでるのだが、おキヌは令子や横島と共に行けないのが悔しかった
(私は美神さんや横島さんと共に戦うために……)
「眠れないのか、おキヌ」
思考の渦に飲み込まれそうだったおキヌだったが、突然かけられた養父の声に現実に引き戻される
「お義父さん…」
「何か悩み事か? 頼りないかもしれないが、私はお前の父親だ。 苦しい時や辛い時は頼っていいんだよ」
養父はおキヌの隣に座り、同じく星空を見つめながら優しく話していた
そんな養父の優しさにおキヌは、言葉に出来ない感情が溢れて来る
「生きるって難しいですね。 幽霊の頃や少し前までは、生きる事はとっても楽しく素晴らしいと思ってました。 でも…、今はわかりません」
溢れて来る感情を抑えて涙がこぼれないように笑顔を作って語るおキヌだが、養父にはそんなおキヌが痛々しく見えていた
「……先日、横島さんが美神さんと私の元を去ったんです。 今まで当たり前だった日常、変わるはずが無いと思っていた未来… 全てが変わってしまったんです」
無言で話を聞く養父に、おキヌは自分の中にある想いを少しずつ言葉にしていく
「いつの間にか、遠い存在になってました。 気が付いた時には手が届かないほど… 私どうしていいかわからなくて……」
途中からおキヌの声は震え始めていた
必死に堪えていた感情が溢れていくように、静かに涙を流す
「そうか…」
一言つぶやいた養父が優しくおキヌを抱きしめると、おキヌは声を殺して泣き続けた
悲しみや苦しみを全て受け止めるように抱きしめる養父と、泣き続けるおキヌの姿は本当の親子のように見える
そして離れた場所では、養母とさなえがそんな二人の姿を密かに見つめていた
「あの馬鹿男! 今度会ったらタダじゃおかねぇだ!!」
「やめなさい、さなえ。 出会いと別れは仕方ないのよ」
「でもっ!」
「彼が何故去ったのかわからないけど、それなりの理由はあると思うわ。 それにあなたが何か言っても、何も変わらないわよ」
横島に対して怒りを爆発させるさなえだが、養母は冷静だった