新しい生活

同じ日、GS協会では次のGS試験の内容に関する会議が行われていた

横島がGSを辞めて以来、何度も会議を行い議論を続けて来た新人GSの管理の問題

それを次回のGS試験で、一定の改革と方向性を打ち出すべく連日議論が続いていたのだ


現状で決まったことは、自己申告による能力の報告義務

霊力値や実戦形式の試合ではわからない能力を、報告させて管理しようと言うのだ

それと言うのも現状のGS協会は、個人の能力を全くと言っていいほど把握してない


その原因は古来よりの伝統にある

古来より霊能の技術や能力は秘匿するのが当然で、選ばれた弟子や子孫など限られた者にだけ代々伝えて来たのだ

能力や技術はそれぞれの家や宗教の秘匿すべき宝であり、第三者に伝えたりするのは決してして来なかったのである



「しかし…、罰則の無い報告義務など守る者が居るのかね?」

会議室は重い空気が支配していた

自己申告による報告義務を課したところで、全ての実力を馬鹿正直に報告する者はいない

会議の参加者自身が霊能者なのだから、わかりきったことだった
 
「別にこれで能力や実力を把握しようとは思わないさ。 協会がGS達の能力や実力を把握しようとする姿勢が大切なのだ」

「この報告義務に意義を持たせるために、試験外免許の取得も認めよう。 補助的な能力者は元々不利な試験だったしな。 ヒーリングなどの能力者にも広く仮免許をだせばいい」

幹部達は様々な意見を出していたが、全体的にはGSの窓口を広げようと考えていた

見習い免許交付の基準の緩和は新人GSの死亡率の増加に繋がる可能性が高いが、現状では師匠たる監督GSの責任において除霊をするため協会がダメージを受けることは無い

早い話が、監督GSの責任とGSを目指す者の自己責任においてGSを目指せばいいと言うことである


あまりにも情けない理由と改革だが、現状のGS協会ではそれが精一杯だった

長い歴史の伝統が尊重される業界なだけに、急激な改革など出来ない

それにこの案ならばGS達やオカルト業界にも利益があるため、強い反対はされないだろうと言う読みもある


結果的に、新人GSの待遇改善は今回は見送られた

安全性に関しては仮免許取得者に一週間ほどの研修を行い、危険性や倫理感などを指導することに決まる

しかし現役GSに対しては指導すら行われないため、師弟や一門の関係が強いこの業界でどれだけ安全性や倫理感を持つかは不明だった


結局、GS協会は新人GSの離職率の高さや目指す者の減少に関して、仮免許取得の緩和と言う措置で落ち着くことになる

中には協会として新人を守り育てるべきだと語る幹部も居たが、現状のオカルト業界では不可能な理想でしかなかった


アシュタロス戦から一年以上が経過して、GS協会幹部の危機感もまた薄れていた

あんな人類の危機など、歴史上では数えるほどしかない

自分達が生きてる間は大丈夫だろうと言う安堵感が広がっている


そして一時は動揺が広がった令子と横島の対立とGS免許返上の問題もまた、協会幹部にとっては他人事に落ち着いていた

落ち着いて考えれば、横島の一人や二人居なくても世界は変わらない

自分達がわざわざ業界を敵に回してまで、改革をすることなど誰もしたくなかったのである

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