終わりと始まり

その後もいろいろ話した横島は、小竜姫に一つの頼み事をしてこの日は帰っていく


横島が帰った後、小竜姫はふと横島が初めて妙神山に来た日の事を思い出していた

今まで妙神山を訪れた人々の中で最も弱く情けなかった人間

あの人間がここまで立派になるとは誰が予想しただろうか


(人間は短い期間で変わるものですね… ルシオラさんとの出会いが横島さんを変えた)

横島とルシオラの羨ましくなるほどの強い絆を感じ、小竜姫は笑みを浮かべている


一方パピリオは、いつの日かルシオラに再会出来るような気がしていた

(またいつかみんなで一緒に暮らしたいでちゅね…)

そんな、祈るような気持ちでパピリオは空を見上げる



そして妙神山を後にした横島は、そのままGS協会のビルに向かっていた

都心のオフィス街の一角にあるGS協会のビルに入り、横島はGS免許返上の手続きをするが…

普通の書類に名前や辞める理由などを記して提出するだけの作業で、あっさりと終わってしまう


「なんかあっけなかったな…」

混み合うGS協会の窓口を後にした横島は、事務的で簡単に終わった免許の返上に、さすがに少し寂しさのようなものを感じる


小竜姫によって与えられた心眼と共に取得したGS免許は、苦労した分だけ思い入れもあったのだ


「こんな時、心眼が居たらなんて言うんだろうな…」

ふと横島は、自分を守って消えていった心眼の最後の言葉を思い出す


《自分を信じろ!》

絶体絶命の中、心眼の最後のアドバイスはその言葉だった


「なあ心眼… いつか俺も自分を信じれる日が来るかな…」

そのつぶやきに答える者は居ない

横島はその答えは自分で探すしかないことを理解している


しかし…

心眼ならなんと言うか、その言葉が知りたかった



この日、見習いゴーストスイーパー横島忠夫は静かに終わりを告げる

その功績も価値も一部の人しか知らないままに…

横島の功績と価値が世界に知れ渡るのは、横島達が消えた後の遥かに先の未来である



危険度と収入共にトップクラスの仕事であるGSは、その希望者も多いが辞める者達も非常に多い


除霊中の事故で辞めて行く者

年齢による衰えから辞めて行く者

そして横島のように別の人生を見つけて辞めて行く者など理由は様々である


「さて、帰るか!」

気持ちを切り替えて横島は魔鈴の店に帰ってゆく



その頃、横島が去ったGS協会内は激震が走っていた

本人は知らないことだが、横島の存在はGS協会内では有名だったのだ


美神令子と言う世界的英雄の弟子であり、人界唯一の文珠使い

それにアシュタロス戦での活躍も、ある程度の内容が広まっている

オカルト業界が、次世代のGSとして大いに期待していたその人物が、何の前触れも無く辞めてしまった

その衝撃的な話は、凄まじい速さで関係者に広まっていくことになる

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