新しい生活

一方デジャヴーランドの横島達は、あの後もいくつかのアトラクションを体験して、夜は花火やパレードを見てから帰宅していた



「さあ、パピリオ帰りましょう」

ベスパとパピリオを迎えに来た小竜姫は、少し言いにくそうにパピリオに語りかける

パピリオの様子が帰りたくないと言うのが丸わかりなのだ


「………」

嫌だとワガママを言う事も出来ずに、横島にしがみつくパピリオの姿は年相応の幼さと辛さが見えていた

そしてそんなパピリオの姿に小竜姫は困り果ててしまう

彼女とて本心では横島と一緒に暮らさせてやりたいが、パピリオが自由に生きることは現時点では不可能なのだ


「パピリオ、小竜姫様を困らせたらダメだぞ。 学校も卒業したし、今度からは月に一回は必ず会いに行くからな」

体にしがみつき無言の抵抗をするパピリオを、横島は優しく諭していく


「横島…」

パピリオとてワガママなのはわかっている

しかし、わかっていても横島と一緒に居たかった


「パピリオ。 今回問題も無く素直に帰れば、また近いうち遊びに来れますよ。 そうですね… 夏には必ず人界に来れるようにしますから」

迷うパピリオが自発的に帰るように仕向ける為、小竜姫は次の約束を持ち出す

本当は次があるかわからないのだが、老師に頼めばなんとかなるだろうと小竜姫は勝手に約束している


「本当でちゅか? ベスパちゃんも一緒でちゅよ?」

パピリオは小竜姫を少し疑うように見つめて、次の話が本当かどうかを確かめていた


「パピリオ… そうだね。 私からも会いに行くよ」

一方寂しそうに自分を見つめるパピリオに、ベスパもまた会いに行く約束をする


そしてみんなの説得を信じたパピリオはようやく帰る気になったらしく、ゆっくり横島から離れて魔鈴達の元に歩み寄った


「帰るでちゅ… 魔鈴もタマモもシロも、今度は妙神山に来るでちゅよ。 お土産を忘れないで……」

うっすら涙を浮かべるパピリオに、魔鈴達もまた熱いものが込み上げていく


「はい、たくさんお土産持って行きますね」

「必ず行くわ」

「今度はパピリオ殿の腕前もみたいでござる!」

魔鈴・タマモ・シロとも別れの挨拶をしたパピリオは、再び横島の前に行く


「ルシオラちゃんの事お願いでちゅ。 でも横島も無理したらダメでちゅからね」

「ああ、まかせてくれ」

パピリオにまで心配された横島は、思わず少し苦笑いを浮かべて約束していた



そして別れ際、横島は最後にベスパに『また来いよ』と一言告げてベスパとパピリオを見送る


「いい人達でしたね」

ベスパ達が帰った後、魔鈴は静かになった自宅に寂しさを感じていた


「本当にな… でも、会ってよかったよ」

横島も静かになったことで寂しさが込み上げているが、それと同じくらいにホッとした気持ちもある

ずっと気になっていたベスパの事も、今回で少しは変わったと思う

それに妙神山に篭りっぱなしで特定の人としか関われなかったパピリオも、魔鈴やタマモやシロと仲良くなった

横島にとって今回の再会は非常に得る物が多かった


「さて、明日からはしっかり働かないとな…」

「期待してますよ、横島さん」

いろいろな事に区切りがつき、横島はもう社会人なんだと改めて感じる

そして魔鈴はそんな横島がこれからどうなっていくのか楽しみであった



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