さて店を後にした横島と魔鈴だが、元クラスメートに関しては特別話す事もなく歩いていた

横島にとってはあの程度の遭遇など気にする程ではないし、魔鈴もあまり深く聞くべきでないと判断したようである


「そろそろ帰りましょうか？　正直、酒飲むなら家で飲んでた方が気楽でいいっすよ」

もう一件行こうかどうかで悩んでた二人だが、横島はそろそろ帰ろうと言い出す

せっかくのデートなのだからとそれらしき落ち着いたバーに入ったのだが、正直あまり楽しくなかったのだ

元クラスメートが居た事もあるが、貧乏が染み付いた横島にとっては場違いな気がして落ち着かなかったのである

横島としては家で魔鈴やタマモやシロと騒ぎながら飲む方が楽しいようだった


「そうですね。　それがいいかもしれません」

ちょっと微妙な笑顔を浮かべて家がいいと言った横島だが、実は魔鈴も同じ気持ちだった

初めてのデートという事でいろいろ楽しく浮かれていたが、落ち着いて考えるとお酒を飲むなら家でゆっくりとした方が好きなのである


（いろいろ楽しかったですが、あまりデートの形にこだわる必要はないのかもしれませんね）

今日はいろいろあり楽しかった魔鈴だが、どこかデートの形に捕われていた感じもしていた

世間一般のデートをしようという感覚が、少し普段の二人のカタチに合わなかったような気がする


（次は私達に合うようなデートをしたいですね）

今日は楽しかったし非常にいい経験になったと感じる魔鈴だが、これからは横島と二人で自分達のペースで楽しめるデートにしたいと密かに考えていた



（昔は彼女作ってバーとかに行く理想を持ってたんだけどな～　思ってたほどじゃなかったな）

一方横島も今日のデートについていろいろ考えていた

かつては叶わないと思いつつ理想と言うか妄想したようなデートは今日実現したが、正直思ったほどの感動はなかったのである

当然魔鈴と一緒で楽しかったし幸せだったのは事実だが、それは毎日の生活でも感じていたのだ

まあ普段見れない魔鈴の一面をたくさん見れたのはよかったが、どこかしっくりこないものも感じている


（デートってより、魔鈴さんが喜ぶ方に考えた方がいいのかもしれんな）

初めてまともなデートを経験した横島は、これから先は魔鈴が楽しめるようなデートにしたいと考えていく


結局横島も魔鈴も似たような事を考えていたようだ

魔鈴は横島と一緒に自分達のペースで楽しめるようにと、横島は魔鈴が楽しめるようにと考える方向は同じである

ただ微妙に違うのは横島が自分よりも魔鈴が楽しめるようにと考えてる点だが、これは横島が魔鈴と一緒ならなんでも幸せだという事から来た考えであり、お互いに相手が楽しめるようにしたいと考えてる内容は同じだった



「それじゃ、帰りましょっか」

それから横島と魔鈴はどちらからともなく手を握り、自宅に帰っていく

いろいろあった一日だったが、横島と魔鈴の初デートは二人共に楽しい一日でいずれはいい思い出になるのは確かである





ちなみに……

この日の夜いつもより早く寝室に入った横島と魔鈴が、次の朝は何故か寝不足気味なのに満たされた表情をしていたのだが……

それは公然の秘密にしておこう