番外編・横島君と魔鈴さんの休日

「なんでも頼んでくれ。 一杯目は俺がおごるよ」

軽く会話と挨拶を交わした横島と魔鈴が隅のカウンター席に座ると、元クラスメートは愛想よく対応する

元々それほど仲がいい訳でもないクラスメートの対応に横島は少し戸惑うが、これも客商売なのだろうと考えていた


(微妙な距離ですね……)

そして二人は適当なワインを頼み飲み始めるが、元クラスメートへの横島の態度は終始無難なものだった

それは特に問題がある態度ではないが、元々誰とでも仲良く出来る横島にしては冷たい態度にもみえる

横島自身は相手に対し特に好き嫌いがないつもりなのだろうが、正直魔鈴から見るといい関係には見えない

そんな元クラスメートのバーテンダーだが、それからは特に横島達を意識する訳でもなく仕事をしていく

横島も最初こそは元クラスメートを気にしていたが、特別関わってくる事がない感じてからは少し肩の力が抜けたようである


(あいつあんな顔もするんだな……)

一方バーテンダーとして仕事を淡々とこなしつつ横島の様子を気にかけていた元クラスメートは、その表情に内心驚きを感じていた

元クラスメートにとっては馬鹿やってぶざけてるイメージが強い横島が、まるで別人のように見えてしまう

大人のようでもあり子供のようでもあるその表情はなんとも言い表すのが難しいが、横島の笑顔が学校当時とはまるで違っていた事には驚きを隠せない


(学校でもあんな風にしていたらモテただろうに……)

そんな横島に対して元クラスメートはその理由を理解出来ないようだった

何故あれほど馬鹿をやっていたのか疑問に感じる部分は残るが、やはり横島は馬鹿なのだろうと簡単に結論付けてしまう


(しかし相手は美人だな~ ってかあの節操がない横島とよく付き合う気になったな)

横島の変化と共にそれの原因である魔鈴にも興味が向くが、どうしても評価が低くなる

まあ一度ついたイメージは簡単には変わらないし、横島と付き合った物好きな女というのが魔鈴のイメージだった



(失敗したな。 まさか高校のクラスメートに会うとは……)

そして横島だが、元クラスメートを少し気にしつつワインを飲んでいく

正直高校にはあまりいい思い出が無く、愛子達を除けば友人と言える者は多くなかった

いずれ同窓会などで昔話を楽しむくらいならいいかもしれないが、個人的に会いたいと思う友人ではない



結局横島と魔鈴は軽く飲んだ後に、早々と店を後にしていた

魔鈴が微妙な空気を感じ店を変えようと言って横島を連れ出したのだ


「横島にはもったいない彼女だな」

横島と魔鈴が店を出た後、元クラスメートは思わず本音を口に出していた

大人な美人で優しく横島を立てていた魔鈴に、元クラスメートは嫉妬していたのだ

馬鹿で節操のない横島だと思っている元クラスメートから見れば、魔鈴は横島とは釣り合わないように見えたのだろう

真面目に生きている自分よりちゃらんぽらんな横島が幸せそうなのが、気に入らないとも言える


端から見れば少し性格が悪いようにも感じる元クラスメートだが、元クラスメートの男達の横島に対する扱いはこんな感じだった

横島を面白い男だと評価する一方で、馬鹿で節操がないと見下してる部分がある

結局横島が3年になり学校に通うようになっても親しい友人が増えなかった原因は、元クラスメート側にもあるのだった


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