番外編・横島君と魔鈴さんの休日

「いや、考えてなかった訳じゃないぞ? タイミングがあればどっか行きたいとは思ってたよ」

「ふう…… 横島君がいろいろ大変なのは一応わかってるけど、もう少し今を楽しんだ方いいと思うわ」

横島とて全く考えてなかった訳ではないが、忙しい日々に追われてるうちにいつの間にかデートをするタイミングを逃がしてしまっていた

しかしそんな横島に対して、愛子はため息と共にもう少し今を楽しむ余裕が必要ではと問い掛ける

ルシオラの件やオカルトの勉強や新しいレストランの仕事で横島達が大変なのは理解してる愛子だが、何か焦りにも似た余裕の無い感じは少しダメなのではと思う


「そうね。 次の休みは二人で一日どっか行って来たら?」

青春に燃える愛子の意見に何故かクールなタマモが賛成して、シロも同じくそれがいいと頷く

基本的に人間の価値観である青春云々はあまり理解してないタマモとシロだが、横島と魔鈴の二人の関係を強化するのはいい事だと感じている

そして今を楽しむべきだと言う愛子の意見にも賛成だった


(今の横島に一番必要なのって、案外そんな部分なのかもね)

最近安定して来たとはいえ、横島の心が傷付いてる現実に変わりはない

そしてそれを少しでも癒すのは、愛子の言うようなデートなどの日常なのかもしれないとタマモは思う


「うーん、デートか~ 確かに全く誘った事がないのはマズイ気がして来た」

三人の意見に流されるように考えが傾いていく横島だが、元々魔鈴への愛情は確かでしっかり愛して大切にして来たのだ

ただし横島と魔鈴の場合は付き合う上でルシオラの事や令子との関係もあり、本来はゆっくり深めていくはずの愛情を短時間で深めてしまっていた

もちろんそれが悪い訳ではないが、本来あるべきデートや外に遊びに行く事などの過程が抜けている

それに加え今までデートもなかった大きな理由は、横島も魔鈴もお互いに相手を気遣いするタイプであり、相手振り回すタイプでないためどうしても消極的になる部分があるためだった


本音を言えば二人ともデートに行きたいとは思っているが、どちらも言い出すタイミングがなかっただけである

下手な夫婦より深い愛情がある半面、付き合った時間の短さは変わらぬため中学生のようにシャイな一面も持つ

まあ横島の場合は女性に振り回されて生きてきたので、相手が振り回さないとどうしていいかわからないといった欠点もあるが……


「普通は男の子からデートに誘ってあげるものよ。 まあ女の子から誘う場合もあるけど、横島君は男の子なんだから魔鈴さんを引っ張ってあげないと」

当然のような常識を告げる愛子の言葉に、横島は腕組みして考え込む

横島の数少ない友人達は基本的に引っ張られる方だろう

GS関係者しか居ないせいか、どうしても個性と言うか我が強い女性が多い


「なんかイメージが良くない気がするが……」

女性を引っ張ってデートに誘うと言えば、西条や大樹をイメージしてしまう

西条は基本的に嫌いだし、大樹に対しては自分と違いモテる父親にコンプレックスがある

横島の中ではあまりいいイメージがないようだ


「馬鹿ね~ 魔鈴さんを喜ばせようとすればいいだけなのよ。 横島がデートに誘えば喜ぶわよ」

変に考えがズレてる横島に対して、タマモは素直に魔鈴を喜ばせるためにやればいいと言う

結局この日は魔鈴と雪之丞が帰って来るまで、三人による横島への刷り込みと言うか意識改革が行われる事になる


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