「なかなか面白い遊びですね。」

「強いなんてもんじゃねえな。 ついさっきまで知りもしなかったのに。」

さて露天風呂を堪能した一同であったが、風呂上がりに卓球台を見つけた結果そのまま卓球をしていた。

最初は男性陣がやっていたのであまり実力差がなかったが、女性陣が来て卓球を知らなかった小竜姫が始めると僅か数分で圧倒的な強さを身に付けてしまい横島達を唖然とさせている。

特に負けず嫌いの雪之丞はあまりの強さに熱くなるも、全く相手にならない。


「こういう相手の動きや玉の動きを読む遊びはいい気分転換になりますね。 妙神山にも欲しいです。」

本来卓球はスポーツなのだが、武神である小竜姫からしたら気分転換にちょうどいい遊びになるらしい。

しかも相手の動きや玉の動きを読んでるらしく、玉のスピードも小竜姫からしたら適度なスピードのようで遊びのようなものなのだろう。

ちなみに女性陣では冥子はこの手のスポーツは壊滅的であるものの、他はタマモが器用で小竜姫ほどではないが上手い以外は可もなく不可もなく普通であった。

特に同じ神魔組や妖怪でもパピリオと天龍童子とシロはあまり上手くなく、神魔や妖怪の力が役に立たないスポーツなだけに苦手なようである。


「どうでもいいが温泉で卓球してるのに小竜姫様の浴衣が全く乱れないのは、つまらんようなホッとしたような。」

なお横島は風呂上がりの小竜姫の浴衣が全く乱れないことを少し残念そうに呟くも、先程魔鈴が卓球をした際には浴衣が乱れないようにと注意をしていて自分は見たいが他の野郎には見せたくないとの本来の横島らしさも多少見せていた。

まあ現在の横島がセクハラ紛いの発言をするのは魔鈴を除くと小竜姫かヒャクメかワルキューレくらいで、信頼関係があってきちんと拒否をする相手だけであるが。


「横島君、よく魔鈴さんの前でそんなこと言えるわね。 そういえば夏の海水浴の時も似たようなこと言ってたけど、自分が逆の立場になったつもりで考えなきゃダメよ。」

「うっ、それはそうか。」

「私は構いませんよ。 きちんと相手の方の気持ちを考えて不快な思いをさせなければ。 そうガチガチに束縛するつもりはありませんので。」

そんな横島に対して苦言とも言えることを指摘したのは青春妖怪である愛子であった。

別に異性を見るなとは言わないが軽々しくセクハラ紛いのことを口にする横島は決して褒められたものではない。

横島も愛子の指摘にすぐに反省するが、意外なことに魔鈴本人は愛子が驚くほど寛容な姿勢で構わないと言い切る。


「本当にいいんですか？」

「その程度のことも言えないような関係では気疲れしてしまいますよ。 相手に対するデリカシーや思いやりも大切ですけど冗談や本音も言える関係でないと。」

受け取り方によっては横島のセクハラ発言を肯定するとも受け取れる魔鈴の発言には愛子のみならず小鳩も驚くが、魔鈴は魔鈴なりに考えがあって横島と向き合っていた。

まああえて言葉にはしない本音としては横島の場合は縛り付けても意味がないと思えばこその発言ではあるが。

母である百合子やかつての上司である令子の横島に対する対応を見ていてもとても効果があるとは思えない。

まるで動物でも躾るように縛り付け力で叩いて躾しようとした結果がかつての横島なのだから。


「大人の女性って違うんですね。」

「私は私なりに横島さんと向き合った結果ですよ。 お互いにきちんと向き合えばそうそうおかしなことにはならないと思いますし。」

魔鈴はあえて言葉にはしなかった過去の横島と令子の関係との比較を自身も心の中でしていた小鳩は、魔鈴が本当の大人の女性なんだと感心したように呟く。

かつての横島と令子の関係も小鳩にはお互いに分かりあってるようには見えたが、結果として横島は令子には言えぬ想いを抱え破綻した。

そう言う意味で横島と魔鈴は、お互いに相手をきちんと受け止めてるように見える。

小鳩は自分もいつか二人のような恋愛が出来るのだろうかと、楽しげに騒ぐ横島を見て思うことになる。