善意と悪意の狭間で
「人間の街は面白いな!」
一方外出した横島達はといえば天龍童子とパピリオとシロが子供のようにはしゃいでいた。
今回訪れた町は取り立てて有名な観光地ではなく地方ならばよくある程度の町でしかないが、それでも近隣の市町村の中では観光地と呼べる場所である。
雪自体は妙神山にも人狼の里にもあるが、その地方ならではの風景や人間の様子は面白いようだ。
まあ天龍童子からすると退屈な王宮の外に出られるならば何処に行っても楽しいのかもしれないが。
「おっ、大食いコンテストか。 いいな。」
「千円の参加費でお腹いっぱい食べれますね。」
町に来たはいいが吹雪とはいかなくともちらちらと雪が降るだけに、歩道にアーケードがある商店街でも町を歩く人はビックリするほど少ない。
そもそも田舎の商店街なだけに空き店舗が多く、数少ない営業してる店も失礼ながら繁盛してるようには見えない。
そんな中横島は雪まつりのイベントの一つである大食いコンテストのポスターを見つけて足を止めると、元貧乏の同志であった小鳩と参加費だけでお腹いっぱい食べれると嬉しそうに語る。
「お前たちそんなに貧しいのか? 言ってくれれば小判でも持って来てやったのだが。 宮殿にはまだ山ほどあるぞ。」
「いえ食べる物に不自由するほどじゃありませんよ。」
「貧乏がすっかり身体に染み付いてるんだよなぁ。」
それは一見すると微笑ましい様子にも見えるが、天龍童子は憐れみの表情で横島と小鳩を見ていた。
世間知らずな天龍でさえお祭りでお腹いっぱい食べれると喜ぶのが普通でないとは分かるらしく、一応とはいえ一度は家臣にした横島やその友人の小鳩のそんな状況に心を痛めてしまう。
小鳩と横島は流石に最近は食べ物に困るほどではないので笑いながら否定はするものの、身体に染み着いた貧乏は簡単には抜けないとしみじみと語る。
(美神さんも悪気があった訳ではないんですけどね。)
横島と小鳩が始めた貧乏話に共感するのかタイガーや雪之丞も加わると何故か貧乏自慢のようになり、貧乏を理解できない冥子は別にしてタマモは呆れているし魔鈴なんかは少し渋い表情を見せていた。
小竜姫はそんな貧乏自慢を始めた横島を見て、この場には居ない令子とおキヌのことを思い出している。
そもそも横島の貧乏の原因は両親にあり一概に令子一人を責められないが、それでも令子の失敗は横島とおキヌに給料の差を付けたことにもあると思う。
横島と令子の決別はルシオラの一件がきっかけであり全てと言ってもいいが、それでも令子が横島を正しく評価していれはまた違っただろうと小竜姫は確信していた。
元々金銭に対する執着や感覚は人間とは違う小竜姫ですら、金銭が評価として大切なのは理解している。
あの隙間風が入りそうなアパートで食べ物に困りながら飢えをしのいで生きていれば、心が荒んでも仕方ないような気がした。
少なくともルシオラの一件で横島が苦しんでいた時に横島を評価して手を差し伸べれば、あれほど心を閉ざすことはなかったはずなのだ。
(お金というのは怖いものですね。)
絶対的に見えるほどの信頼と絆がお金というモノで真逆と言ってもいいほどに変わってしまったことが、小竜姫としては寂しくもあり怖くもあった。
恐らく令子とおキヌは今も横島が離れた訳をきちんと理解してないだろうことは想像に難しくない。
ただその兆候がルシオラの一件の随分前からあったことも確実であり、かつて横島が雪之丞に着いて妙神山に修行に来たのも本質的には令子に認められたかったからなのだ。
ずっと令子に認められたかった横島に対して、天の邪鬼な令子は目に見える形で認めなかったことが現状の遠因にある。
いつの日か和解出来ればと思う小竜姫ではあるが、現状では神魔人界の未来を左右するほど複雑な立場の横島と令子を和解させることは彼女でも不可能であった。
一方外出した横島達はといえば天龍童子とパピリオとシロが子供のようにはしゃいでいた。
今回訪れた町は取り立てて有名な観光地ではなく地方ならばよくある程度の町でしかないが、それでも近隣の市町村の中では観光地と呼べる場所である。
雪自体は妙神山にも人狼の里にもあるが、その地方ならではの風景や人間の様子は面白いようだ。
まあ天龍童子からすると退屈な王宮の外に出られるならば何処に行っても楽しいのかもしれないが。
「おっ、大食いコンテストか。 いいな。」
「千円の参加費でお腹いっぱい食べれますね。」
町に来たはいいが吹雪とはいかなくともちらちらと雪が降るだけに、歩道にアーケードがある商店街でも町を歩く人はビックリするほど少ない。
そもそも田舎の商店街なだけに空き店舗が多く、数少ない営業してる店も失礼ながら繁盛してるようには見えない。
そんな中横島は雪まつりのイベントの一つである大食いコンテストのポスターを見つけて足を止めると、元貧乏の同志であった小鳩と参加費だけでお腹いっぱい食べれると嬉しそうに語る。
「お前たちそんなに貧しいのか? 言ってくれれば小判でも持って来てやったのだが。 宮殿にはまだ山ほどあるぞ。」
「いえ食べる物に不自由するほどじゃありませんよ。」
「貧乏がすっかり身体に染み付いてるんだよなぁ。」
それは一見すると微笑ましい様子にも見えるが、天龍童子は憐れみの表情で横島と小鳩を見ていた。
世間知らずな天龍でさえお祭りでお腹いっぱい食べれると喜ぶのが普通でないとは分かるらしく、一応とはいえ一度は家臣にした横島やその友人の小鳩のそんな状況に心を痛めてしまう。
小鳩と横島は流石に最近は食べ物に困るほどではないので笑いながら否定はするものの、身体に染み着いた貧乏は簡単には抜けないとしみじみと語る。
(美神さんも悪気があった訳ではないんですけどね。)
横島と小鳩が始めた貧乏話に共感するのかタイガーや雪之丞も加わると何故か貧乏自慢のようになり、貧乏を理解できない冥子は別にしてタマモは呆れているし魔鈴なんかは少し渋い表情を見せていた。
小竜姫はそんな貧乏自慢を始めた横島を見て、この場には居ない令子とおキヌのことを思い出している。
そもそも横島の貧乏の原因は両親にあり一概に令子一人を責められないが、それでも令子の失敗は横島とおキヌに給料の差を付けたことにもあると思う。
横島と令子の決別はルシオラの一件がきっかけであり全てと言ってもいいが、それでも令子が横島を正しく評価していれはまた違っただろうと小竜姫は確信していた。
元々金銭に対する執着や感覚は人間とは違う小竜姫ですら、金銭が評価として大切なのは理解している。
あの隙間風が入りそうなアパートで食べ物に困りながら飢えをしのいで生きていれば、心が荒んでも仕方ないような気がした。
少なくともルシオラの一件で横島が苦しんでいた時に横島を評価して手を差し伸べれば、あれほど心を閉ざすことはなかったはずなのだ。
(お金というのは怖いものですね。)
絶対的に見えるほどの信頼と絆がお金というモノで真逆と言ってもいいほどに変わってしまったことが、小竜姫としては寂しくもあり怖くもあった。
恐らく令子とおキヌは今も横島が離れた訳をきちんと理解してないだろうことは想像に難しくない。
ただその兆候がルシオラの一件の随分前からあったことも確実であり、かつて横島が雪之丞に着いて妙神山に修行に来たのも本質的には令子に認められたかったからなのだ。
ずっと令子に認められたかった横島に対して、天の邪鬼な令子は目に見える形で認めなかったことが現状の遠因にある。
いつの日か和解出来ればと思う小竜姫ではあるが、現状では神魔人界の未来を左右するほど複雑な立場の横島と令子を和解させることは彼女でも不可能であった。