ゆく年くる年・2
それから二日ほどした日の夜、魔鈴は夕食にと巻き寿司を作ろうとしていた。
元々ヨーロッパ系の料理は店を出したいと勉強した魔鈴であるが、日本料理は一般的な家庭で作る程度であり巻き寿司なんかも正直さほど得意ではない。
先日の節分の話題で太巻きの話をしていたので久しぶりに作ろうと思ったようだ。
「巻き寿司は孤児院にいた頃はみんなで酢飯を扇いだりしてお手伝いをしながら作ったんですよ。 運動会とか遠足の時とか見栄えがよくて美味しいので人気でした。」
前日から仕込んでいたかんぴょうや干し椎茸の煮物にマグロやサーモンなどの魚介に納豆なんかも具材として用意している。
酢飯に関しては日頃からいなり寿司を作るのでよく作っていて寿司桶もあるので横島やシロがうちわで扇ぎながら慣れた様子で冷ましているが、ふと魔鈴はそんな横島とシロを見て孤児院時代のことを話し出していた。
魔鈴にとって巻き寿司は孤児院での想い出の料理の一つらしい。
「今思えば院長先生達はいかに限られたお金でご馳走を作るか考えていたのでしょうね。 手間だけは惜しまなかったですから。」
魔鈴の出身の孤児院も流石に食べ物に困るほどではなかったが、運動会や遠足の時はかなり考えてくれていたことを魔鈴も大人になって改めて理解したようである。
一緒にお手伝いをして作ったことやみんなで食べたことなどは今となっては懐かしい想い出のようだ。
「運動会は小学校の頃は楽しかったっすね。」
「あら中学や高校は楽しくなかったんですか?」
「中学はあんまり。 高校はそもそも学校の行事はバイトを優先してほとんど休みましたから。」
そのまま酢飯が完成すると魔鈴は巻き寿司を作り始めるが、横島が魔鈴の話から小学校の運動会は楽しかったと言うと魔鈴とタマモとシロは中学や高校のことが気になり尋ねるも横島の答えはいまいちパットしないものだった。
横島の昔話で意外に出てこないのは中学の話であり、魔鈴達も興味があるらしい。
ただ横島としてはちょうど思春期を迎えた頃に東京に来た影響もあって、東京に来て以降の学校生活は正直あまりいい想い出がないのだ。
よく言えばムードメーカーだったとは言えるものの、本音では学校自体がさほど好きではなくなっていた。
東京では自由だった大阪時代のように出来なかったし、そうなると堅苦しい集団生活に横島は息苦しさを感じてならなかったという過去がある。
まあ彼女の一人でも出来ればまた違ったのだろうが、生憎とそんなことがなかったため特に話すような内容がないだけだった。
尤も本当に横島が思うようにモテないかはまた別問題であるが。
結局は苛められていた訳でも嫌な想い出がある訳でもないのだが、横島の人生では一番つまらない時期だったのかもしれない。
(学校で大成しないタイプってやっぱり居るんでしょうかね。)
一方特にいい想い出も嫌な想い出もない中学時代の横島を考えると、魔鈴は学校では大成しないというか成長しないタイプなのかもしれないと密かに思う。
言い方は良くないが現実にはドラマのように立派で生徒想いの教師なんて早々居るものではない。
現実には生徒が教師に合わせなければ上手くいかないのが日本の一般的な学校の姿である。
まあこれには教師自体が仕事を抱えすぎているので一人一人の個性に合わせた指導なんて出来ないという教師側の事情もあるのだが。
ともかく学校という集団で大成しない人間がいるのは確かだろうと思うし、横島もそのタイプなのだろうなと思う。
実際問題として横島は潜在的な能力は高いので学校でそれを伸ばせてればもっと違う人生もあったはずなのだ。
基本的に横島は人間関係は意外に不器用な面があるなと魔鈴は巻き寿司を作りながらしみじみと感じていた。
元々ヨーロッパ系の料理は店を出したいと勉強した魔鈴であるが、日本料理は一般的な家庭で作る程度であり巻き寿司なんかも正直さほど得意ではない。
先日の節分の話題で太巻きの話をしていたので久しぶりに作ろうと思ったようだ。
「巻き寿司は孤児院にいた頃はみんなで酢飯を扇いだりしてお手伝いをしながら作ったんですよ。 運動会とか遠足の時とか見栄えがよくて美味しいので人気でした。」
前日から仕込んでいたかんぴょうや干し椎茸の煮物にマグロやサーモンなどの魚介に納豆なんかも具材として用意している。
酢飯に関しては日頃からいなり寿司を作るのでよく作っていて寿司桶もあるので横島やシロがうちわで扇ぎながら慣れた様子で冷ましているが、ふと魔鈴はそんな横島とシロを見て孤児院時代のことを話し出していた。
魔鈴にとって巻き寿司は孤児院での想い出の料理の一つらしい。
「今思えば院長先生達はいかに限られたお金でご馳走を作るか考えていたのでしょうね。 手間だけは惜しまなかったですから。」
魔鈴の出身の孤児院も流石に食べ物に困るほどではなかったが、運動会や遠足の時はかなり考えてくれていたことを魔鈴も大人になって改めて理解したようである。
一緒にお手伝いをして作ったことやみんなで食べたことなどは今となっては懐かしい想い出のようだ。
「運動会は小学校の頃は楽しかったっすね。」
「あら中学や高校は楽しくなかったんですか?」
「中学はあんまり。 高校はそもそも学校の行事はバイトを優先してほとんど休みましたから。」
そのまま酢飯が完成すると魔鈴は巻き寿司を作り始めるが、横島が魔鈴の話から小学校の運動会は楽しかったと言うと魔鈴とタマモとシロは中学や高校のことが気になり尋ねるも横島の答えはいまいちパットしないものだった。
横島の昔話で意外に出てこないのは中学の話であり、魔鈴達も興味があるらしい。
ただ横島としてはちょうど思春期を迎えた頃に東京に来た影響もあって、東京に来て以降の学校生活は正直あまりいい想い出がないのだ。
よく言えばムードメーカーだったとは言えるものの、本音では学校自体がさほど好きではなくなっていた。
東京では自由だった大阪時代のように出来なかったし、そうなると堅苦しい集団生活に横島は息苦しさを感じてならなかったという過去がある。
まあ彼女の一人でも出来ればまた違ったのだろうが、生憎とそんなことがなかったため特に話すような内容がないだけだった。
尤も本当に横島が思うようにモテないかはまた別問題であるが。
結局は苛められていた訳でも嫌な想い出がある訳でもないのだが、横島の人生では一番つまらない時期だったのかもしれない。
(学校で大成しないタイプってやっぱり居るんでしょうかね。)
一方特にいい想い出も嫌な想い出もない中学時代の横島を考えると、魔鈴は学校では大成しないというか成長しないタイプなのかもしれないと密かに思う。
言い方は良くないが現実にはドラマのように立派で生徒想いの教師なんて早々居るものではない。
現実には生徒が教師に合わせなければ上手くいかないのが日本の一般的な学校の姿である。
まあこれには教師自体が仕事を抱えすぎているので一人一人の個性に合わせた指導なんて出来ないという教師側の事情もあるのだが。
ともかく学校という集団で大成しない人間がいるのは確かだろうと思うし、横島もそのタイプなのだろうなと思う。
実際問題として横島は潜在的な能力は高いので学校でそれを伸ばせてればもっと違う人生もあったはずなのだ。
基本的に横島は人間関係は意外に不器用な面があるなと魔鈴は巻き寿司を作りながらしみじみと感じていた。