ゆく年くる年
そのまま横島と魔鈴は二時間ほど身体を動かしていた。
結果を見れば当然ながら横島の方が体力があり、横島は男性としての面目を保っている。
「俺も少し運動不足っすかね」
ただ横島自身は以前と比べると体力が落ちたかと感じていた。
正直魔鈴の元に来てからは無茶と言えるような修行はしてないし、キツい仕事も当然ながらあり得ない。
重い荷物を持ち悪霊に追い回されていた頃や寝る間を惜しんで修行していた頃と比べると当然ながら体力は落ちている。
「成人男性の平均よりは体力があるじゃないですか」
これに関しては以前の横島ならば絶対に考えもしなかったことであるが、横島は自身の体力低下に少し危機感を感じていた。
しかし魔鈴は横島の運動のデータを見て平均的な成人男性よりは確実に高いので問題ないと告げる。
「別に雪之丞やシロみたいに強くなりたい訳じゃないんっすけどね。 ただなんというか少し怖いってのが本音ですかね」
ただこの件に関しては魔鈴と横島の価値観の違いは大きかった。
魔鈴はあくまでも横島を普通の成人男性として考えているが、横島自身は未だにGSとして最前線で戦っていた感覚から抜けきっていない。
決して強くなりたいなどという向上心ではないが、単純に今以上に弱くなることには恐怖を感じている。
昔よりは勉強にシフトした雪之丞ですら少ない時間で己の実力を上げるように努力しているだけに、横島は自分はこのまま体力を落としていいのか不安なのだ。
「横島さん……」
横島がGSを辞めてもうすぐ一年になるが、魔鈴は横島の心が未だに平穏に戻れてないことをこの時改めて痛感する。
以前のように感情が暴走するような危うさはだいぶ無くなりはしたが、横島の心は未だに生死を賭けるような日々から開放されてないのだ。
「横島さん、人として生きる以上はいつかは衰えが来るものですよ。 一般的な霊能者の肉体の全盛期は二十代だそうです。 従って若い頃は体力自慢の霊能者も年を重ねる毎に技術で勝負するようになると言いますし。 この辺りはスポーツ選手なんかと同じですが、霊能者の場合だと技術で体力をカバー出来る期間が長いんです。 そもそも霊能力は人間では極めることが難しい力だとも言いますからね」
結局魔鈴は自身の体力低下に思った以上に不安を感じている横島に一般的な霊能者の話をして不安を少しでも和らげようとする。
まあ本来は二十歳そこそこの人にする話ではないが、自分の身体能力低下に悩むのは霊能者ならばいずれ通る道であった。
肉体的な能力の低下は人間ならば避けられないが、そこからはいかにして霊能力の技術を高めていくかがGSを長く続ける秘訣でもある。
「いやもうGSに戻るつもりはないですし、昔みたいに命を賭けて闘う気もないですけどね。 ただ弱くなるってのは考えてなかったんっすよ」
少し心配そうな魔鈴が語った一般的な霊能者の話を興味深げに聞いていた横島は、今まで考えもしなかったことだと素直に告白した。
そもそも横島はそこまで考えるほどの余裕は今まで全くなかったのだ。
「ちょうどいいですから、今年は私達も少し運動しましょうか。 ただし以前のような無茶はダメですからね」
そのまま今までは考えもしなかったことを考え始めた横島を見た魔鈴は、ちょうどお正月ということもあり今年はもう少し運動をしていこうと横島に持ち掛けることにした。
少し運動不足だったのは魔鈴も同じであり、霊能者として最前線で闘う気はなくとも一定の身体能力は維持したいとは思うのである。
特に横島の場合は過去が過去だけに万が一を考えると一定の能力維持は必要なことでもあった。
もちろん以前のような無茶をしないように釘を刺すのも忘れないが、昨年は主に基礎トレーニングばかりだった横島の修行を変える必要はあると考えている。
結局横島の気晴らしにと考えて出掛けたはずの魔鈴からして真面目な話をしてしまうが、これは魔鈴の性分なので仕方ないのかもしれない。
結果を見れば当然ながら横島の方が体力があり、横島は男性としての面目を保っている。
「俺も少し運動不足っすかね」
ただ横島自身は以前と比べると体力が落ちたかと感じていた。
正直魔鈴の元に来てからは無茶と言えるような修行はしてないし、キツい仕事も当然ながらあり得ない。
重い荷物を持ち悪霊に追い回されていた頃や寝る間を惜しんで修行していた頃と比べると当然ながら体力は落ちている。
「成人男性の平均よりは体力があるじゃないですか」
これに関しては以前の横島ならば絶対に考えもしなかったことであるが、横島は自身の体力低下に少し危機感を感じていた。
しかし魔鈴は横島の運動のデータを見て平均的な成人男性よりは確実に高いので問題ないと告げる。
「別に雪之丞やシロみたいに強くなりたい訳じゃないんっすけどね。 ただなんというか少し怖いってのが本音ですかね」
ただこの件に関しては魔鈴と横島の価値観の違いは大きかった。
魔鈴はあくまでも横島を普通の成人男性として考えているが、横島自身は未だにGSとして最前線で戦っていた感覚から抜けきっていない。
決して強くなりたいなどという向上心ではないが、単純に今以上に弱くなることには恐怖を感じている。
昔よりは勉強にシフトした雪之丞ですら少ない時間で己の実力を上げるように努力しているだけに、横島は自分はこのまま体力を落としていいのか不安なのだ。
「横島さん……」
横島がGSを辞めてもうすぐ一年になるが、魔鈴は横島の心が未だに平穏に戻れてないことをこの時改めて痛感する。
以前のように感情が暴走するような危うさはだいぶ無くなりはしたが、横島の心は未だに生死を賭けるような日々から開放されてないのだ。
「横島さん、人として生きる以上はいつかは衰えが来るものですよ。 一般的な霊能者の肉体の全盛期は二十代だそうです。 従って若い頃は体力自慢の霊能者も年を重ねる毎に技術で勝負するようになると言いますし。 この辺りはスポーツ選手なんかと同じですが、霊能者の場合だと技術で体力をカバー出来る期間が長いんです。 そもそも霊能力は人間では極めることが難しい力だとも言いますからね」
結局魔鈴は自身の体力低下に思った以上に不安を感じている横島に一般的な霊能者の話をして不安を少しでも和らげようとする。
まあ本来は二十歳そこそこの人にする話ではないが、自分の身体能力低下に悩むのは霊能者ならばいずれ通る道であった。
肉体的な能力の低下は人間ならば避けられないが、そこからはいかにして霊能力の技術を高めていくかがGSを長く続ける秘訣でもある。
「いやもうGSに戻るつもりはないですし、昔みたいに命を賭けて闘う気もないですけどね。 ただ弱くなるってのは考えてなかったんっすよ」
少し心配そうな魔鈴が語った一般的な霊能者の話を興味深げに聞いていた横島は、今まで考えもしなかったことだと素直に告白した。
そもそも横島はそこまで考えるほどの余裕は今まで全くなかったのだ。
「ちょうどいいですから、今年は私達も少し運動しましょうか。 ただし以前のような無茶はダメですからね」
そのまま今までは考えもしなかったことを考え始めた横島を見た魔鈴は、ちょうどお正月ということもあり今年はもう少し運動をしていこうと横島に持ち掛けることにした。
少し運動不足だったのは魔鈴も同じであり、霊能者として最前線で闘う気はなくとも一定の身体能力は維持したいとは思うのである。
特に横島の場合は過去が過去だけに万が一を考えると一定の能力維持は必要なことでもあった。
もちろん以前のような無茶をしないように釘を刺すのも忘れないが、昨年は主に基礎トレーニングばかりだった横島の修行を変える必要はあると考えている。
結局横島の気晴らしにと考えて出掛けたはずの魔鈴からして真面目な話をしてしまうが、これは魔鈴の性分なので仕方ないのかもしれない。