ゆく年くる年

「そろそろ他の場所に行きましょうか」

そのまま二人分のパーティー関連の衣装やアクセサリーなどの小物を見て歩いた横島と魔鈴だったが、ぶっちゃけ横島は途中から飽きていた。

ブランド品の価値など理解出来ない横島からするとどれもたいした違いがあるとは思えないが、魔鈴は値段やデザインなどを何件か店を変えながら探していたのだ。

まあ実際のところ魔鈴もさほどブランド品や高価な品は興味がなかったのだが、どうせ買うならば自分が気に入る物が欲しい。

その結果二時間以上時間が経過しており、流石に横島も限界かとこの日のショッピングは止めることにする。


「俺は別にこのままでもいいっすよ」

一方の横島は魔鈴が感じた通り完全に飽きており最早値段にも反応しなく魔鈴を見てるだけだったが、特に苦痛を感じたりや苛立っていた訳ではなかった。

幼い頃には母の買い物を父と二人で遅いなと話ながら待っていたこともあるし、そもそも恋人の買い物に文句を付けるほど横島は女性に慣れてない。

まして選んでいるのは横島の過去の不始末のために行かねばならないパーティーなのだ。

元々魔鈴もあまり権力絡みのパーティーが好きではないのは横島も理解しているし、それに付き合ってもらってる立場なのも当然ながら理解していた。


「せっかくですから少し身体を動かしましょうか」

そんな訳で横島はいいとは言うものの魔鈴もまた飽きている横島を放置する気はなく、少し街をぶらついて考えた魔鈴は横島をスポーツジムに誘う。

横島達と暮らして以来雪之丞やシロと運動する機会があったのですっかり利用しなくなったが、魔鈴は元々スポーツジムで運動する機会が多かったらしい。


「運動なら毎晩し...」

「もう、貴方と言う人は。 誰が聞いてるか分からない場所では言葉を選んで下さい」

実は魔鈴としては元旦と昨日の2日でかなり美味しい物を食べ過ぎたので太らないかと少し気にしている。

横島は当然ながらそんな魔鈴の考えなど理解しておらずつい下ネタを口にしてしまうが、今の魔鈴はいつ誰に聞かれるか分からない公衆の面前で下ネタを言うことには注意をするが内容や価値観自体は否定はしなかった。

正直横島が多少なりとも女性に慣れたように魔鈴もまた横島と言うか男性に馴れている。

元々少し極端な価値観が魔鈴にはあったが横島と親しくなり関係を深めるうちにだいぶ変わっていた。

横島や魔鈴自身も実際にはあまり自覚はないが、それはかつて令子が横島と関わり変わった様子に似ている。

もちろん元々の性格の良さから魔鈴の方が変化のスピードが早いとの事実があるが。


「若いころからの日常の生活習慣は大切なんですよ。 それに私は年上ですから気をつけないと...」

横島の不用意な発言から魔鈴はつい説教くさくなってしまうが、そんな言葉の裏には横島との年齢差から将来的なことを気にしてしまう。

まあ横島としては魔鈴との年齢差など全く気にしてないが、そもそもいずれ復活させたいと願っているルシオラは魔族なため、とりあえず自分たちが生きてる間は老けることはないだろう。

もしそんな時が来た時に自分は横島にどう見られるのかということなんかも、つい気にしてしまうのが魔鈴の女心だった。

ルシオラを復活させたいとの想いは変わらないが、同時にその後にも不安が多少なりともあるのもあるのが現実なのである。




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