ゆく年くる年

さて妙神山で楽しい一日を過ごした翌日の横島達だが、この日は特に予定がないので家でゆっくりすることになった。

実は人狼の里に行こうかとの話もあったのだが、冬場は雪が深くて大変だとのことなので取りやめになっている。


「シロは散歩か」

「もう少し落ち着くことを教えるべきなんでしょうけど、まだ幼いですからね」

結果として魔鈴宅のリビングで寛ぐ横島達であったが、じっとしてるのが苦手なシロは早々に散歩に行ってしまった。

尤もゆっくりするとはいいつつ魔鈴もまたオカルト関係の雑誌を読んでいて、仕事はしてないが休んでるかと言えば横島から見ると微妙なのだが。


「横島さんは一人暮らしの時の休日は何をしてたんですか?」

一方魔鈴は最新のオカルトアイテムの雑誌を読みながらも、暇そうにテレビを見ている横島に視線を向ける。

タマモは昼寝するからと自室に戻っており久しぶりに二人っきりになったが、何をする訳でもなくテレビを見る横島が少し気になるらしい。

元々魔鈴は休日は目的を持って過ごすタイプであり、それが普通だった。

それゆえに何もしないで暇そうな横島が気になるのだろう。


「休日っすか? うーん、基本的に寝てるかテレビ見てゴロゴロしてましたよ。 外に出れば金がかかりますからね」

横島の過去はとんでもない話ばかりなので少し不安を感じつつも話を聞く魔鈴だったが、その答えは扱く普通でまるで休日のお父さんのようであった。

そもそも横島の一人暮らし時代は何よりも金がないということが全てなのだ。

休日に外に出れば少なからずお金がかかるし、図書館のような場所に行って勉強したり本を読むタイプでもない。

酷使された身体を休めるのは横島の休日で一番重要だったのだが、魔鈴はやはり何とも言えない表情で聞いている。


(休日ですし自由でいいんでしょうけど……)

まあ魔鈴も横島の休日の過ごし方にケチを付けるつもりは全くないので別に文句はないが、高校生の休日にしては寂しいなとは感じてしまう。

そもそも学生の時間は社会人になってからでは得られないような時間であり、その過ごし方は重要ではと思うのだ。


(美神さんはやはりタチが悪いんですかね)

横島の高校時代を聞く上で魔鈴が気になるのは、やはり令子であり令子との関係だろう。

何というか端から話を聞くと、令子が日頃から横島を上手く縛り付けていたという風にしか感じないのである。

無論選んだのは横島本人であり他人のせいにするのは良くないが、狭い範囲で濃い世界しか知らない横島は魔鈴から見て不憫に感じた。


「少し買い物に付き合ってくれませんか?」

「いいっすよ」

しばらく暇そうな横島を見ていた魔鈴は、せっかくの休日だから少し横島をいつもと違う場所に連れ出してみようと思い買い物に誘うことにする。

一応タマモにも声をかけたが、今日は寝てるからと気を使ったので横島と魔鈴は久しぶりに二人で出掛けることになった。



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