一方店内の銀一や愛子達は、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった

こちらもかおりや魔理と同じく、頭が混乱しており全てを理解した訳ではない

しかし魔鈴の話した通り、今の横島を見ようということだけは心に決めていた


そして個室から戻った雪之丞は、また前と変わらない様子で食事を始める

良くも悪くも雪之丞らしい行動だった


そんな中、雪之丞の隣に座ったタイガーは落ち込み気味に俯いている

こちらは雪之丞と違い、魔理のことや横島のことをいろいろ悩んでるようであった

特にアシュタロス戦後の横島の話は、毎日学校で顔を合わせていたタイガーにとって、かなりショックだったようである


（ワッシは一体どうすれば…）

横島と魔理の板挟みに悩み苦しむタイガー

彼は今までも魔理が騒ぐたびに横島のフォローをして、魔理の横島に対する印象を良くしようとしてきた

しかし魔理が知るのは横島の悪い面ばかりだっため、魔理には理解出来なかったのだ

まあ、タイガー自体も魔理に強く言えないことや、アシュタロス戦の真実などを隠していたため説得力が無かったのも原因だが…



そんな時、店の奥から横島とタマモが現れる

少し伺うように銀一や愛子達と雪之丞やタイガーを見るが、あまり過剰な反応を示さないことに安堵した


「横島ー！！　パピと遊ぶでちゅ！」

一番最初に動いたのはパピリオである

いつもと同じように横島に突進して抱き着き、ワガママを言う


「パピリオ、お前とは明日一日遊んでやるからさ。　お前はお腹いっぱいだろうけど、俺はまだ何にも食ってないんだよ」

少しよろめきながらパピリオを受け止めた横島は、なだめるように話していく


（パピリオ、ありがとうな…）

そんな会話の中、横島はパピリオがわざとワガママを言ったことに気が付いている

いくらパピリオが幼いとはいえ、この状況で突然遊びたいとワガママを言うはずがないのだ


「ムッ…、仕方ないでちゅね。　明日は人間の街に行きたいでちゅ！」

横島を元気付けようとワガママを言ったパピリオだったが、明日遊ぶ約束をしてくれたことは嬉しかったようである

ちゃっかり自分のリクエストを忘れない


「ああ、そうだな。　街を案内してやるよ」

パピリオのうれしそうな笑顔に、思わず横島も素直に笑顔を見せていた

やはり横島にとってパピリオは家族と同じであり、その笑顔がなりよりも嬉しいのである


そんな横島とパピリオのやりとりは、パピリオの意図した以上の効果をあげていく

悩みながらも今の横島を素直に見ようと必死になっていた銀一達の心を、軽くしていたのだ

あまりの短時間に頭の整理が出来ずに、自然と重く深く受け止めて肩に力の入っていた彼らをリラックスさせている

結果的ではあるが、店内の空気も一気に緩み軽くなっていた



そして横島は雪之丞とタイガーのテーブルに行く

「二人共わかってると思うけど、変に遠慮する必要はないからな。　自分の気持ちを大切にしろよ。　特にタイガー、お前は魔理さんと良く話し合え。　困ったら相談くらいなら乗るからさ」

小さな声で語りかける横島に、雪之丞はあまり当たり前だと言わんばかりの表情であり、タイガーはそのまま頷く

そんな二人の様子を見た横島は多少の不安は残るが、今後少し様子を見るしかないと思う