ゆく年くる年

そのまま楽しい時間は続き、午後になると横島はシロ・パピリオ・ヒャクメ・愛子・小鳩らと一緒に雪合戦やら雪だるまを作って遊ぶ。

ただ普通と違うのは全長五メートル近い雪だるまが、妙神山の庭に完成したことだろう。

まるで札幌の雪祭りの大雪像のような大きさに魔鈴とタマモは驚きや呆れの表情を見せたが、横島とシロとパピリオが調子に乗った結果である。


一方の魔鈴の方は普通におしゃべりをしたり小竜姫に料理を教えるなど、ゆっくりとした午後を過ごしていた。

日頃から働き過ぎではと横島達に言われる魔鈴が、目的もなくゆっくりするのは妙神山に来た時くらいである。

そういう意味では妙神山での正月は魔鈴にとってもいい休養になっているし、同時に魔鈴が霊能で相談出来る数少ない相手は小竜姫なのだ。

まあ小竜姫は魔鈴の使う魔法は専門外なのでそちらはさほど相談には乗れてないが、基礎技術の更なる向上や戦闘技術の習得など小竜姫達に相談出来る恩恵は計り知れない。

ただ魔法に関しては天才的なセンスと技術がある魔鈴だけに、それらの基礎技術や戦闘技術の向上が魔法技術にも応用出来そうだと独自に考え始めてはいるが。


「魔鈴さんの場合はもう少し修行を積んでからの方がいいかと思いますよ。 霊力自体は成長期は過ぎてますが、技術的にはまだまだ修行の余地がありますから」

そんな魔鈴と小竜姫だが、先程の鬼道の試練の様子を見ていた魔鈴は自身も試練を受けようかと少し考え相談していた。

もちろん短期間で劇的なパワーアップをしたい訳ではないが、自身の能力に限界を感じることが最近時々あるのだ。

ただ小竜姫は魔鈴にはまだ令子や鬼道が受けたような試練は早いと言い切る。


「もう少し時間をかけて修行して、自分の形を明確にする方が先でしょう。 確かに霊力自体は成長期は過ぎてますが、全く成長しない訳でもないですし」

現在の魔鈴は弱点の克服という訳ではないが得意の魔法技術以外の地道な修行を重ねており、小竜姫はそれらの修行が一段落するまで妙神山の試練は必要ないと告げた。

言い方は悪いが今の魔鈴が焦って試練を受けても、将来的にはあまりプラスにならないと小竜姫は考えている。

まあ横島や令子の例もあるので魔鈴がどうしてもと言うならば反対はしないのだろうが、現状の魔鈴では自身の高い魔法技術を除霊や戦闘に生かしきってない。

もう少し地道な修行で自分の形を作らないことには、中途半端になるだけだと考えていた。


「正直魔鈴さんは何を目指すのか、まずはそこから考える必要があるのかも知れません」

元々魔鈴が以前には全く興味を示さなかった戦闘技術に取り組み始めたのは、他ならぬ横島の影響が非常に大きい。

万が一の時には横島の足を引っ張らない程度の力が、そして可能ならば共に闘える力が欲しいと考えた結果である。

ただ現状での魔鈴の戦闘技術は、はっきり言えば中途半端としか言えない程度なのだ。

無論このまま横島共々GSとして第一線を退いたままならば現状でも十分ではあるが、魔鈴は横島の運命を考えるとダメだと考えていた。


「何を目指すかですか……」

魔鈴自身も自分にはどんな戦いが出来るのか、そして向いているのか試行錯誤しながら日々修行を続けている。

小竜姫に妙神山の試練はまだ早いとはっきり言われた魔鈴は、今年はそんな自身の進むべき道を見つけようと心に決めていた。



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