ゆく年くる年

「へ~、霊視と霊感と総合力ね」

その後横島達は和気あいあいと楽しんでいたが、鬼道の試練は二時間ほどで終了し鬼道は無事に帰ったようだった。

小竜姫は鬼道にもよかったら横島達と食事をしていかないかと声をかけたが、相変わらず横島達と小竜姫の関係を誤解したままの鬼道は自分が邪魔をしてはいけないと丁重に断り下山している。


「要望が指導者としてのものでしたからね。 直接的な力を与えても意味がありませんし」

小竜姫達が戻って来たことで話は鬼道の結果になっていたが、鬼道が得た力は霊視・霊感・総合力の三つだったらしい。

かつて令子が得た力は攻撃力と防御力だったが、鬼道の場合は式神使いと教師という性質を考えると霊視や霊感をあげるべきだと小竜姫が考えたようだ。


「失敗したら死ぬんでしょ? よくやるよなぁ」

「ああ、その話は冗談ですよ。 試練に失敗したら与えた力は取り上げますが、流石に命まではとりません。 あれは横島さんが逃げ出すなんて言うから少し警告しただけです。 失敗して本当に死ぬのは横島さんが受けた試練だけですよ」

鬼道が見事試練を乗り越えたと聞いた横島は失敗すると死ぬような試練をよくやるなとまるで他人事のように語るが、小竜姫はそんな横島を見てクスクスと笑うとその話は冗談だったと暴露する。

横島はそんな小竜姫の話に多少驚きつつも笑ってしまうが、実はあのシャドーを使った試練は死の危険はあまりなく最後の相手である小竜姫も手加減することになってる上に一撃でも攻撃を加えることに成功すればいいだけのようだった。


「横島君、失敗したら死ぬような試練受けたの!?」

一方横島と小竜姫とヒャクメと老師以外の者達は、そんな話よりも横島が死の試練を受けたことに驚き固まっている。


「いや、俺知らなかったんだよね。 一緒に来た雪之丞が勝手に決めてさ。 小竜姫様もソフトコースに変えてくれなかったし」

「あの試練は美神さんと横島さんと雪之丞さんが受けましたが、私が一番向いていると思ったのは横島さんでしたよ。 柔軟性と潜在能力の高さは言うまでもないですしね」

愛子や小鳩は元より魔鈴やタマモ達ですら驚いているが、魔鈴やタマモ達に関しては横島が文珠を会得したのが妙神山の試練だとは知っていたがそれが死の試練だとは知らなかったのだ。

正直魔鈴達も横島の性格上まさか死の試練に挑むとは全く思わなかったらしい。


「死の試練ですか……」

横島が死の試練を受けたことに対し知らなかったメンバーはそれぞれが驚きや複雑な心境を感じて受け止めるが、魔鈴もまた複雑な心境を持ってその話を聞いていた。

文珠という奇跡に限りなく近い能力を得るには相応の修行が必要だったことは想像に難しくないが、それでも魔鈴は命を賭けた修行を受けた横島を素直に尊敬し褒める気持ちにはなかなかなれない。

魔鈴の性格からすると、もっと先にするべき修行や勉強があったのではと考えてしまうのだ。

尤も横島の過去に関しては考えさせられることの連続なので今更だなとも思うが。



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