ゆく年くる年

「久しぶりだな」

その後修業者が鬼道だということで横島も呼ばれ修業場に顔を見せに来るが、実のところ横島と鬼道は知り合いと言える程度の関わりしかない。

正直挨拶に顔を見せる程度には知り合いだが、さほど話が弾むほど親しい訳ではなかった。


「正月から妙神山に来るなんて、今でも修業ばっかりしてんのか?」

「僕には才能がないから生徒に教える為には僕がより修業せなあかんのや」

正月から妙神山に修業に来るなんて物好きだなと横島は思うが、鬼道は魔理の一件やおキヌの現状もあり自身の過去の指導に反省している。

まあ魔理の件だけならば自業自得とも言えるが、年頃の女の子を相手に日々指導に悩むこともあり妙神山に来たようだ。


「それでコースは何にしたんだ?」

「それはまだこれからですよ。 さて鬼道さん、どんな修業を望みますか?」

結局あまり話が弾むこともなく話は修業に戻るが、鬼道は多忙らしく今日一日で出来る範囲で修業を受けたいらしい。

ただ妙神山の場合は普通に日帰りだと下山に時間がかかるので、実質的には長くても半日程度しか時間がない。


「目的はGSとしてではなく指導者としてですか?」

「はい、そうです」

いかに妙神山といえど僅か半日程度で修業を終えるには、それなりに覚悟が必要になる。

例えば横島と雪之丞が受けたような命を賭けた修業になればリスクが大きい分リターンも大きい。

ただ命を賭ける修業は本来よほどの資質が無ければ認めないし、修業を受ける者がそれに相応しくなければ認めてなかった。

そして一番の問題が鬼道が指導者としてここに来たということだろう。

単純に能力向上や技術伝授をするだけでいいのか小竜姫は少し悩んでしまう。


「基本的にソフトコースとハードコースがありますが、どちらを望みますか?」

「ハードコースでお願いします」

しばし悩んでいた小竜姫だが、鬼道に基本的なコースの選択を促すと鬼道は当然ながらハードコースを選んでいた。

その場の空気でなんとなく見ている横島はやっぱりといいたげな表情だが、実は妙神山に遊びには来ても本格的な修業を初めて見る魔鈴とシロは興味津々なようである。


「正直貴方はもう霊能者としての成長期は過ぎてます。 残念ながら修業に見合う成果はないかも知れませんがいいですか?」

ハードコースを選んだ鬼道に小竜姫は久しぶりに緊張感ある表情で、最終確認とも言える念を押すが鬼道の決意は変わらない。


「ではこれより貴方には三つの試練を受けて頂きます」

かつて令子や横島が試練を受けた異界空間で真剣な表情の小竜姫が試練の説明を始めるが、それは実に単純でこれから小竜姫の用意した対戦相手と戦って勝てばいいだけであった。

どうやら基本的には令子がかつて受けたコースと同じらしい。


(俺も見てなきゃダメか?)

緊張した様子の鬼道を魔鈴とシロは静かに見守っていて二人はどうやら最後まで見てるつもりらしいが、横島ははっきり言えば全く興味がない。

さっさと母屋に戻って料理でも食べながらノンビリとしたいが、流石にこの場の空気から言い出せずに見てるしかなかった。



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