ゆく年くる年

次の日の横島達は予定通り妙神山を訪れていたが、この日は暇だった愛子と小鳩と貧の三人も一緒だった。

実はこの日の朝に暇を持て余した愛子と小鳩が新年の挨拶と称して魔鈴宅に遊びに来たので、ついでに一緒に妙神山に誘っている。

移動手段は例によって行きも帰りも文珠による転移だったので移動の楽しみがないが、妙神山の場合は普通に行くと往復の時間だけで相当かかるのでこればっかりは仕方ないことだった。


「こんなに賑やかなお正月は初めてですね」

妙神山に到着した横島達は新年の挨拶をして小竜姫達が生活する母屋に行くが、この日はベスパとヒャクメも偶然妙神山を訪れていたようだ。

小竜姫が横島達が来るからと料理を作っていたので、いつの間にか宴会のような流れになってしまう。

冬の妙神山は山であることから当然寒く、母屋の縁側から見える景色は見事な雪景色である。

暖房に関しては薪ストーブと火鉢が基本だが、石油ストーブも一応あるようだ。

燃料に関してはつい最近までは自分達で近くの山から薪を調達したり炭も作ったりもしたようだが、最近は横島の影響で小竜姫が人間界に慣れたので妙神山近くのホームセンターから買ってるなんて事情もあるが。

ただ問題がない訳でもなく妙神山には当然ながら灯油の配達なんて来てくれないので、灯油は小竜姫と鬼門がポリタンクで毎回買って来てるが手間がかかるので石油ストーブは朝に部屋を暖めるまでくらいしか使ってない。

ちなみに以前に横島が寒さや暑さを遮断するような結界とかないのかと小竜姫に尋ねたことはあるが、小竜姫いわく暇な妙神山において季節の変化まで無くなればつまらないどころの話ではないので、そういう結界はあるにはあるが使ってないとのこと。


「薪ストーブや火鉢ってのもいいな」

薪ストーブや火鉢は基本的に気温を調整が難しいが、妙神山のような寒さでは最適だった。

薪ストーブの上には鍋が二つかけられておりお雑煮の鍋と熱燗を温める鍋が乗っているし、火鉢の上では餅を焼いて焼きたての餅を味わっている。

シロと貧は先程から火鉢でひたすら餅を焼いては食べることを繰り返しているし、愛子と小鳩は小竜姫や魔鈴やタマモとおしゃべりに華を咲かせていた。

横島はパピリオやヒャクメに絡まれつつベスパがパピリオをやんわりと止めるなど、どこも賑やかであった。

ちなみに老師は鬼門と一緒に酒を飲みながらゲームの相手をさせているが、相変わらず容赦ないらしく鬼門は慣れないゲームに苦労してるようである。


「あれ~、誰か来たみたいなのね」

そのまま賑やかなな宴会がダラダラと進む中、時間がお昼の少し前くらいになると若干酔ったヒャクメが突然来客が来たことに気付いたようだ。

最近は横島達がよく遊びに来る妙神山だが、他の来客は来ることは相変わらずないので小竜姫と門を離れていた鬼門は驚きつつも急いで向かっていく。


「修業者か? 珍しいな」

「結構若くて真面目そうな人なのねー」

「男か? 女か?」

「男の人なのね」

珍しい修業者に横島も多少興味があるのかヒャクメにどんな人物かを確かめるが、修業者が男だと知ると興味をなくしたようで料理を食べることに戻ってしまう。


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