ゆく年くる年
さて横島達が帰宅したのは、すっかり日も暮れた夜のことだった。
この夜の夕食はお節料理と鍋を中心にしたメニューだが、鍋は季節的に美味しい寒ブリのしゃぶしゃぶであり正月だからと少し豪華な夕食になっている。
本当はクリスマスにパピリオから貰った御神酒と一緒にと考えていたのだが、あれは雪之丞も楽しみにしてるので後日飲むことにしていた。
「それにしてもどこも人でいっぱいだったわね」
そんな夕食を味わいつつホッとした表情を見せたのはタマモである。
油の乗った寒ブリをしゃぶしゃぶで程よく熱を加えると寒ブリの旨味が一層引き立ち絶品であり、人混みに疲れた様子のタマモもその美味しさで元気を取り戻す。
「元旦に行くとこなんて、だいたい決まってるしな」
元々あまり人が好きではないタマモは人混みに疲れたと語るが、それでも横島と魔鈴はそんなタマモの為に出来るだけ人混みを避けていた。
ただそれでも元旦に初詣や初売りに行くと混んでることに変わりはない。
「拙者はあまり気にならないでござるが」
一方の同じ妖怪であるシロは相変わらず元気そのものであり人混みに疲れたタマモを不思議そうに見つめるが、これに関しては実は人混みにおいても身辺に最低限の気配りをしていることがタマモが疲れた原因でもあった。
まあさほど神経質になっていた訳ではなく日頃からの最低限の警戒ではあるが、霊的にも活発な元旦で人混みとなると疲労するのも無理はない。
「私はあんたと違ってデリケートなのよ」
弱いでござると余計な一言を呟くシロにタマモは少しムッとした表情でデリケートだからと返すが、実際には横島達やシロに気付かれぬように警戒するのは楽ではないのだ。
正直そこまでするほど現状は危険ではないが、これも彼女の性分なのだろう。
それに相手が神魔ならば万が一の時には通信鬼で小竜姫を呼べばすぐに駆け付けてくれる約束もあるので、タマモの精神的な負担は以前と比べるとかなり軽い方ではある。
「シロちゃん、妖怪に限らず人間の大人も人混みが苦手な人は居るのよ」
ちょっとした言葉をきっかけにまた例のごとく口ゲンカを始めるタマモとシロを、魔鈴は止めつつも人混みが苦手なのは珍しくないと教えていく。
基本的に精神年齢が低いシロは自分が出来ることを他人が出来ないと弱いと考えがちだが、相性というか何事にも合う合わないは存在する。
今回のように他人を否定するのではなく理解するようにと、シロに最低限の常識を教えるのはこの家では魔鈴の役割であった。
間違っても妖怪としての枠から外れぬようにとかなり気を使いつつも、シロにはもっと学ぶべきことがあると考え教えることは横島には不可能だろう。
当然人間の常識がありながらも妖怪の側の常識も理解せねばならないだけに、実際にそんなことが出来るのは世界的に見ても多くは居ないだろうが。
昨年一年で霊能者が一生賭けても知ることが出来ないような、神魔や妖怪の実物大の姿を数多く見た魔鈴の一つの成長の結果なのかもしれない。
一つ一つ積み重ねていくそんな魔鈴宅の元旦の夜の姿は、紛れもなく家族の団欒であった。
この夜の夕食はお節料理と鍋を中心にしたメニューだが、鍋は季節的に美味しい寒ブリのしゃぶしゃぶであり正月だからと少し豪華な夕食になっている。
本当はクリスマスにパピリオから貰った御神酒と一緒にと考えていたのだが、あれは雪之丞も楽しみにしてるので後日飲むことにしていた。
「それにしてもどこも人でいっぱいだったわね」
そんな夕食を味わいつつホッとした表情を見せたのはタマモである。
油の乗った寒ブリをしゃぶしゃぶで程よく熱を加えると寒ブリの旨味が一層引き立ち絶品であり、人混みに疲れた様子のタマモもその美味しさで元気を取り戻す。
「元旦に行くとこなんて、だいたい決まってるしな」
元々あまり人が好きではないタマモは人混みに疲れたと語るが、それでも横島と魔鈴はそんなタマモの為に出来るだけ人混みを避けていた。
ただそれでも元旦に初詣や初売りに行くと混んでることに変わりはない。
「拙者はあまり気にならないでござるが」
一方の同じ妖怪であるシロは相変わらず元気そのものであり人混みに疲れたタマモを不思議そうに見つめるが、これに関しては実は人混みにおいても身辺に最低限の気配りをしていることがタマモが疲れた原因でもあった。
まあさほど神経質になっていた訳ではなく日頃からの最低限の警戒ではあるが、霊的にも活発な元旦で人混みとなると疲労するのも無理はない。
「私はあんたと違ってデリケートなのよ」
弱いでござると余計な一言を呟くシロにタマモは少しムッとした表情でデリケートだからと返すが、実際には横島達やシロに気付かれぬように警戒するのは楽ではないのだ。
正直そこまでするほど現状は危険ではないが、これも彼女の性分なのだろう。
それに相手が神魔ならば万が一の時には通信鬼で小竜姫を呼べばすぐに駆け付けてくれる約束もあるので、タマモの精神的な負担は以前と比べるとかなり軽い方ではある。
「シロちゃん、妖怪に限らず人間の大人も人混みが苦手な人は居るのよ」
ちょっとした言葉をきっかけにまた例のごとく口ゲンカを始めるタマモとシロを、魔鈴は止めつつも人混みが苦手なのは珍しくないと教えていく。
基本的に精神年齢が低いシロは自分が出来ることを他人が出来ないと弱いと考えがちだが、相性というか何事にも合う合わないは存在する。
今回のように他人を否定するのではなく理解するようにと、シロに最低限の常識を教えるのはこの家では魔鈴の役割であった。
間違っても妖怪としての枠から外れぬようにとかなり気を使いつつも、シロにはもっと学ぶべきことがあると考え教えることは横島には不可能だろう。
当然人間の常識がありながらも妖怪の側の常識も理解せねばならないだけに、実際にそんなことが出来るのは世界的に見ても多くは居ないだろうが。
昨年一年で霊能者が一生賭けても知ることが出来ないような、神魔や妖怪の実物大の姿を数多く見た魔鈴の一つの成長の結果なのかもしれない。
一つ一つ積み重ねていくそんな魔鈴宅の元旦の夜の姿は、紛れもなく家族の団欒であった。