ゆく年くる年

さて人数が集まったことで分かれて除霊をすることになるが、横島は唐巣と組むことになった。

これに関してはGS免許持ちの唐巣・ピート・雪之丞を分けて、横島・カオス・マリアと一人ずつ組むことになったのだが実力や経験で考慮した結果である。

経験に劣る雪之丞には経験豊富なカオスを付けて、年齢的に無理をさせたくない唐巣には霊力も高く器用な横島をピートが付けたのだ。

ピートとマリアは彼らを優先させた結果だが、一番タフで仕事量を熟せることも考慮していた。


(そういえば、横島君と普通の除霊をするのは初めてだな)

結果予期せぬタイミングで横島と除霊をすることになった唐巣だが、少し複雑な心境を感じずにはいられないようである。

本来横島は唐巣の孫弟子であり、正確には直接責任問題が及ぶ訳ではないが責任が重いのは変わらない。

最近はGSと一言で言ってもいろいろな師弟関係があるが、それでも令子や唐巣ほど師弟関係が軽いGSは珍しかった。

令子に関しては師匠への対応が本当に悪かったが、同時に弟子に対しても甘く厳格な師匠関係を元々嫌いなのが明らかである。

いろいろ問題行動が多く面倒くさい人間である令子だが、この点に関しては行動が一貫しており平等だった。

そんな令子に比べて唐巣は自分に厳しく他人に甘いと一種の人間の理想のような性格をしているが、度が過ぎてるためか正直弟子の育成にはあまり向かないのが実情である。

唐巣自身もそれを理解してるが故に、横島に関しての指導なんかに口を挟んだことはない。

ある意味では唐巣は横島と令子の絆を信じていたし、それはアシュタロス戦が起きるまでは上手く行っていた。

それが気が付いたら横島がGSを辞めてしまい令子と決別してしまったのだから、直接の師匠としての責任は六道冥菜よりも遥かに重いのが実情である。

そんな横島と今こうして一緒に除霊をすることに唐巣は自身の罪を感じずにはいられなかった。


「なんか顔色悪いですけど、大丈夫っすか? 除霊は指示だけ出してくれればいいっすよ」

一方唐巣と二人でさっそく除霊に出かけた横島だったが、顔色が悪く無言の唐巣にまた疲れを溜めたのかと少し呆れ気味だった。

正直横島にとって唐巣は何度か一緒に戦った仲間かピートの師匠という認識くらいしかなく、まさか自分のことで悩んでるとは思いもしない。

近いようで遠い関係が横島にとっての唐巣の印象だ。


「いや、大丈夫だよ。 ……君も立派になったなと思ったらついね」

呆れた表情をしながらも心配するように声をかける横島に、唐巣は少し苦笑いを浮かべて大丈夫だと言い切るが横島は全く信じてない。

そんな横島に唐巣は少しだけ懐かしそうに、初めて出会った頃の横島を思い出していた。


「どうしたんっすか急に。 そりゃ荷物持ちよりは成長しましたけど……」

表情が冴えないと思ったら突然立派になったなどと褒める唐巣を、横島は怪訝そうな表情で見つめる。

改めて言われるようなことには思えないし、横島には唐巣が何を考えてるか分からない。

また何かを考え過ぎてるのかと半ば呆れてはいたが、それを単刀直入に尋ねるほど横島と唐巣は親しい訳ではないのだ。



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