ゆく年くる年

それから数日が過ぎた三十一日になると街は年末の空気に包まれていた。

魔法料理魔鈴は前日の三十日で今年の営業を終了しており、この日は魔鈴がタマモとシロに手伝って貰いながら朝からお節料理を作っている。


「本当に貧乏暇なしって感じだな」

そして一人料理をしてない横島はと言えば、この日は唐巣の教会を朝から訪れていた。

本来ならば魔鈴達と一緒に正月準備をしつつゆっくりしてるつもりだったのだが、予想以上に除霊依頼が立て込んでいる唐巣達の手伝いに来ている。

この時期になるとGS協会の仕事も休みになるので唐巣本人も張り切っているのだが、依頼の数が例年以上に多かったらしい。


「年末の忙しい時にすまないね」

そんなこの日の助っ人は横島・雪之丞・ドクターカオス・マリアと結構なメンバーが揃っている。

カオスに関しては本職のGSの給料としてはあまり多くはないが、給料を払って年末から雇ってるようだ。

現在唐巣の教会はGS協会役員の仕事がある唐巣がピートに任せており、事実上ピートが仕切っていた。

そのピートはエミから紹介された依頼を上手くこなしながら教会の収支を劇的に改善している。

カオスの雇用もその一貫であり、確実に収入を得ることでその分だけ人を増やしボランティアとも言える除霊を無理なく行えるようにしていた。

正直さほど儲けがある訳ではないが、ピート自身の収入と教会の収入を分けており少しずつだが教会として貯金もしている。

唐巣のライフワークとも言える貧しい人々を救う活動を今まで以上に行うのを基本に、教会や唐巣自身の将来も考えて活動していた。

以前ならば除霊で収入を得ることに病的なほど拒否反応を示していた唐巣も、現在ではほとんど拒否反応はなくピートに任せている。

まあ唐巣自身が依頼人から料金を貰うことは相変わらずないが、人間に対する迷いや悩みが減ったピートが本来の年齢に相応しい精神的な強さを見せると完全に信頼して任せていたのだ。


「うちは昨日で店が終わったんで、今日くらいならいいっすよ」

朝の教会では唐巣とピートが大量の依頼を前に誰にどの依頼を頼むか相談していたが、流石の唐巣も横島が来たことに少し驚いていた。

GSを引退して以降も魔鈴の除霊には参加してるのは知っていたが、エミや唐巣の除霊の手伝いをする雪之丞と違い横島が魔鈴以外の除霊を手伝いをするのは意外だったらしい。

ただ横島としては雪之丞から人手が足りなく今年中に終わらせたい依頼が終わらないかもと聞いたので、一日くらいならばと軽い気持ちで手伝いに来ただけだったのだが。


「……えっと、除霊にも参加するつもりかい?」

「任せますよ。 別に荷物持ちでも電話番でも除霊でもなんでも」

横島がGSを辞めた経緯を考え唐巣は除霊に参加させていいのか悩み本人に尋ねるが、横島自身は手伝いに来たので本当に何でもするつもりである。

過去への後悔からか横島を気遣う唐巣だが、実のところ横島はそういう面ではかなりふっ切っており霊能力自体を使うことまで嫌な訳ではない。

それなりに役に立つだろうと軽く考えて手伝いに来ただけだった。



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