ゆく年くる年

さて三年も残り数ヶ月になってからようやく本格的な修業を始めた魔理だが、彼女の年末は相変わらず修業と勉強漬けの日々だった。

同級生ばかりではなく下級生にも陰では笑われていたが、本人は薄々そんな空気を感じつつも相手にせず努力している。

冬休みに入ると朝夕の霊能の修業はもちろんのこと日中にも教師の指導の元で修業を出来るが、毎日朝夕の修業に居る生徒はほとんど同じ顔ぶれであった。

現状で魔理の実力は対人戦闘に限定すると決して低くはないのだが、それ以外は一年生にも劣る始末だった。

何より基礎的な霊能の知識が壊滅的なため、教師の指導の意味を理解することすら出来ずに失笑をされることも珍しくはない。

中学生のような容姿のシロに対人戦闘で圧倒的に負けてプライドがボロボロにされた魔理だったが、現状はそんな過去が優しく感じるほど自分が落ちこぼれだったことを痛感している。

流石に不良だけあって喧嘩の腕前と根性だけはあるというのが、同じく朝夕の修業を受けてる生徒達の見方だった。



「理事長、本当ですか!?」

そんな年の瀬の六道女学院では、理事長である冥菜が学院の教師達の前で一つの計画を発表していた。


「もちろん本当よ~。 来年度から実施するわ~」

相変わらず間延びした口調で緊張感がない冥菜だが、教師達は驚き戸惑っている。

計画の内容は来年の春を目処に六道女学院卒業生を対象とした、GS養成塾を開設することにしたというものであった。

この養成塾に関しては実は数年前から議論にあった一つでもある。

目的は高校三年で修業が間に合わない生徒の救済であり、魔理は極端な例としても例年でも才能はあるのに一般家庭に生まれた為に修業が三年で間に合わない生徒は何人か居たのだ。

元々危険が多く浮き沈みの激しいGS業界だけに、そういった間に合わない生徒はGSを諦める者が大半だった。

冥菜は以前からいかにしてそういった才能ある一般人をGS業界に残すかを考えており、この決定には魔理や横島の存在も無関係ではない。

この春には横島がGSを辞めた影響でGS試験に書類選考枠が設けられ業界が固唾を飲んで様子を見ていたが、あの試験での書類選考枠での免許取得者の五割が試験合格組より評価が高いという数値が最近GS協会の内部で明らかになっている。

実際のところ書類選考枠のGSは対人戦闘に関しては不得意な面々だったが、並の悪霊レベルの除霊ならば逆に試験合格組よりも評判はよかった。

下手に力に頼らない分だけ慎重だったし、受ける仕事さえ間違えなければ既存のGSに劣らぬと彼らは証明したのだ。

その結果として来年以降の書類選考枠の継続が正式に決まったため、六道女学院でも書類選考に対応したカリキュラムを現在構築してる真っ最中である。

今回のGS養成塾はそんなGSの門戸が広がったこともあり、一定の成果が望めることから実現した計画だった。



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