ゆく年くる年

「ここにあったか」

その後荷物を整理して残りの未整理荷物が二箱になった頃、ザンス勲章が見つかるが二年以上前の求人雑誌の間に挟まっていた。


「そういやあの頃よく転職考えてたもんな」

ザンス勲章はファミレスの求人ページに挟まっていて、本のしおりの代わり使っていたことを思い出す。

当時の横島はザンス勲章を本のしおりに使ったりカップ麺の蓋を押さえる重しに使ったりと散々な扱いだったのだ。

いつの間にか見当たらなくなり忘れてしまったが、横島にとって勲章なんてそんな物だった。


「魔鈴さん、勲章ありましたよ」

「へ~、これがザンス勲章ですか」

勲章を見つけた横島はクルクルと振り回しながら魔鈴に見せに行くが、魔鈴は興味津々な様子で勲章を見つめる。


「やはりオカルトのアイテムですね」

予想以上に興味津々な魔鈴を横島は少し不思議そうに見つめるが、そんな魔鈴の言葉に横島は驚きに満ちていた。


「オカルトっすか」

「ええ真ん中の石は小さいですが精霊石ですね。 私も初めて見る魔法陣が裏に刻まれてます。 恐らくは精霊の加護だと思いますが」

物珍しそうに勲章を見つめる魔鈴は勲章の価値を語るが、横島は捨てなくてよかったと肝を冷やす。

誰も横島にそんなことを教えてくれなかったし、横島はゴミと一緒に捨てようかと半ば真剣に考えたこともあるのだ。


「詳しくは調べてみないとわかりませんが、同様のオカルトアイテムと比べると効果は高いと思いますよ。 効果はなんでしょうね?」

どうも研究者魂に火が点いたのか魔鈴は瞳を輝かせて説明するが、すぐにでも調べてみたいと態度に現れていた。

そんなザンス勲章に瞳を輝かせた魔鈴だが、流石に大掃除を放り出して研究する気はないらしく大掃除を再開する。

日頃からこまめに掃除する魔鈴故に大掃除でもさほど苦労することはないが、自宅と店の大掃除をするだけにそれなりに時間はかかるのだ。

まあそれでもお昼を挟んで午後三時頃には終わっていたが。



「夕飯は外食にしましょうか」

大掃除が終わると最後に魔鈴達がお風呂に入って大掃除で汚れた身体や服を洗うと、この日のやるべきことは全て終わりだった。

時間はすでに夕方の五時を回っており、魔鈴が今夜は外食にしようと言い出すと横島達は夕飯を食べに出かけることになる。

そもそも外食は魔鈴の趣味なのだが、店の営業もあって普段はなかなか外食に出ることは出来ない。

ちょうどよくこんな時間に暇になることは珍しいので、この日は魔鈴が前々から行きたかった店に行き少しだけリッチな夕飯を取ることになった。

この時タマモとシロはせっかくだから横島と魔鈴の二人で行って来てはと告げるが、横島も魔鈴もみんなで行こうと二人を連れ出している。

確かに時々は二人になる時間が欲しくなる時もあるが、正直みんなで一緒に居る方が楽しく充実してるのも確かだった。

少し時間があるので夕食の前にショッピングをして、最後に夕飯を食べてこの日は終わることになる。

街はすっかり年末の慌ただしい雰囲気だったが、横島達は風邪を引かないようにと暖かい格好で休日の夜を楽しむことになった。



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