ゆく年くる年

その後魔鈴達も掃除を始めるが、タマモとシロもまずは自分達の部屋の掃除から始めていた。

二人の部屋に関しては普段から二人が掃除しており、これに関して魔鈴はプライベートルームには元々関与してないのである。

というか二人の個室に関しては魔鈴が判断する前にタマモとシロが自発的に掃除していたので、魔鈴はそれを見て任せていただけなのだが。


「あえて掃除するほどの場所ってあんまりないのよね」

「そうでござるな」

タマモとシロの二人はまずはいつもと同じように掃除をするが、二人の部屋はさほど物がある訳ではなく改めて大掃除するほどの場所はない。

そもそも二人の部屋にはベッドとクローゼットがあり、他には本棚と二人用のテーブルがある程度なのだ。

タマモもシロも持ち物は自分達の洋服以外はクローゼットに入ってる小物が少ししかない。

二人で協力して照明やベッドの下を掃除したが、物が少ないだけにあっという間に終わっている。


「ねえ、二人は一人部屋が欲しいかしら?」

自分達の部屋の掃除を終わらせた二人はすぐに次の掃除する場所を尋ねに魔鈴の元に行くが、魔鈴はキッチンの掃除をしながら少し部屋の使い方を考えていたようだ。


「私は別にどっちでも……」

「拙者も現状には不満はないでござるよ」

二人の顔を見るなり唐突に一人部屋が欲しいかと尋ねる魔鈴だったが、タマモもシロも反応はイマイチだった。

どうも魔鈴は物置になってる横島の個室を、タマモかシロに使わせようと考えてるようなのだ。

どうせ横島が物置にするだけなら荷物を魔鈴の寝室と別にある物置に移して二人のどちらかに使わせた方がいいのは確かなのである。

ただタマモもシロも個室自体あまり使ってないのが実態だった。

シロに関しては元々人狼の里でも自分の部屋なと持ってなく、人狼の生活にはそういう習慣がなかったらしい。

父親と二人暮らしなため寝起きも一緒だったし、はっきり言うと一人で部屋を貰っても使い道が浮かばないようなのだ。

タマモに関しては本当にどっちでもいいらしく、シロや魔鈴の好きしていいというくらいにしか考えてない。

一人部屋になって不便や困る訳でもないが、かと言って何かが良くなる訳でもないのが現状だった。

基本的にシロは起きてる間は部屋でじっとしてる時間は少なく、暇な時間があれば雪之丞と修行を始めてしまう。

タマモは時々自分達の部屋で読書をするが、それも別に自分達の個室だけでなく魔鈴の書斎で読む時もある。

まあ将来的にはどうなるかは分からないが、現状であえて一人部屋を貰う必要がないというのが共通意見らしかった。


「そうですか。 横島さんが個室は必要ないみたいですし、よかったら二人にと思ったんですけど」

最終的に二人のイマイチな反応に、魔鈴は個室の件は当分このままでいいかと思う。

実際二人に個室の件を持ち出した魔鈴ですらも、寝室は寝る時以外には使わない訳だし。

魔鈴には別に魔法の研究室や書斎はあるものの、あれは仕事部屋という印象であり個室のつもりではない。

どうせなら大掃除に合わせて部屋の移動もしようかとも思ったのだが必要なかったようである。



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