ゆく年くる年
一方クリスマス期間の愛子と小鳩は、イヴの日もクリスマス当日であるこの日も唐巣の教会で手伝いをしていた。
彼女達の雇い主であるエミがクリスマス期間を休みにして手伝いに来たことがきっかけだが、二人も結構楽しんで手伝っている。
「なんか忘年会みたいになりましたね」
「本当よね」
本来の教会ならばクリスマスミサが主役のはずなのだが、唐巣の教会では食事が主役となりお酒も振る舞われていた。
雰囲気的には教会で忘年会をしてる感じに近いのかもしれない。
「形は気にする必要はないんだよ。 元々私は破門された身であり正式な神父ではないからね。 みんなで楽しんでくれればそれでいいんだ」
賑やかで楽しげな声が教会に響く中、唐巣はそんな人々を見つめ満足そうな笑顔を見せていた。
クリスマスミサらしくない雰囲気に物珍しそうな小鳩と愛子にも、気にせずに楽しんで欲しいと声をかける。
教会を訪れる人々は幅広く当初予定していた近所の住人や唐巣がかつて除霊した人々以外にも、引退した元GSとか六道女学院の生徒の姿もちらほら見えていた。
他には少数だが人間に化けた妖怪も何人か来ていたが、こちらも特に問題にはなってない。
みんな差し入れを片手に訪れては、いろいろな人達と交流したりして楽しんでいた。
集まった人々の多さは、唐巣の人徳の証であろう。
(GSね……)
賑やかな教会内を見ていると、愛子はGSの奥深さを感じずにはいられない。
妖怪の側から見る一般的なGSは決して嬉しい存在ではないのだが、愛子が知るGSはみんな妖怪をむやみに排除したりはしてないのだ。
もちろん彼らが超一流であり特別なのは愛子も理解してるが、同時に彼らのようなGSが増えて欲しいと願わずにはいられなかった。
(ピート君、貴方の願う未来が来るといいわね)
ピートの真の願いがブラドー島や世界各地に隠れ住む吸血鬼達の平穏なのに愛子は気付いている。
唐巣と共に率先して多くの人々と交流するのも、根底には仲間達の平穏な未来が欲しいとの願いがあるのだ。
ピート自身はその願いを人に話したことはないが、同じ妖怪である愛子は痛いほど理解している。
きっと唐巣もそれを理解するが故に、今回の企画を賛成したのだろうと愛子はシミジミと感じていた。
(それにしても……、エミさんは本当にわかってるのかしら?)
教会にはピート目当ての若い女の子達も何人も来ている。
愛子や小鳩の同じ学校の生徒も居るのでよく分かるが、彼女達とエミは火花を散らして互いに牽制しあっていた。
ただ愛子はエミがどこまで人外と生きる覚悟があるのかが少し気になっている。
寿命や種族が違う人と妖怪の関係は、人が考えてる以上に難しい。
ましてかつては人と争い迫害された経験のある、吸血鬼と人が愛し合うのは本当に難しいだろう。
(横島君なら……)
最悪の場合は愛する者の為に人としての全てを捨てるほどの覚悟が必要だと愛子は思うが、エミにそこまでの覚悟があるのか愛子には分からない。
ただ横島ならばきっと迷わないのだろうと思うと、愛子は胸の奥が微かに苦しくなる気がした。
何はともあれこの日は夜遅くまで唐巣の教会から笑い声は絶えることはなかった。
彼女達の雇い主であるエミがクリスマス期間を休みにして手伝いに来たことがきっかけだが、二人も結構楽しんで手伝っている。
「なんか忘年会みたいになりましたね」
「本当よね」
本来の教会ならばクリスマスミサが主役のはずなのだが、唐巣の教会では食事が主役となりお酒も振る舞われていた。
雰囲気的には教会で忘年会をしてる感じに近いのかもしれない。
「形は気にする必要はないんだよ。 元々私は破門された身であり正式な神父ではないからね。 みんなで楽しんでくれればそれでいいんだ」
賑やかで楽しげな声が教会に響く中、唐巣はそんな人々を見つめ満足そうな笑顔を見せていた。
クリスマスミサらしくない雰囲気に物珍しそうな小鳩と愛子にも、気にせずに楽しんで欲しいと声をかける。
教会を訪れる人々は幅広く当初予定していた近所の住人や唐巣がかつて除霊した人々以外にも、引退した元GSとか六道女学院の生徒の姿もちらほら見えていた。
他には少数だが人間に化けた妖怪も何人か来ていたが、こちらも特に問題にはなってない。
みんな差し入れを片手に訪れては、いろいろな人達と交流したりして楽しんでいた。
集まった人々の多さは、唐巣の人徳の証であろう。
(GSね……)
賑やかな教会内を見ていると、愛子はGSの奥深さを感じずにはいられない。
妖怪の側から見る一般的なGSは決して嬉しい存在ではないのだが、愛子が知るGSはみんな妖怪をむやみに排除したりはしてないのだ。
もちろん彼らが超一流であり特別なのは愛子も理解してるが、同時に彼らのようなGSが増えて欲しいと願わずにはいられなかった。
(ピート君、貴方の願う未来が来るといいわね)
ピートの真の願いがブラドー島や世界各地に隠れ住む吸血鬼達の平穏なのに愛子は気付いている。
唐巣と共に率先して多くの人々と交流するのも、根底には仲間達の平穏な未来が欲しいとの願いがあるのだ。
ピート自身はその願いを人に話したことはないが、同じ妖怪である愛子は痛いほど理解している。
きっと唐巣もそれを理解するが故に、今回の企画を賛成したのだろうと愛子はシミジミと感じていた。
(それにしても……、エミさんは本当にわかってるのかしら?)
教会にはピート目当ての若い女の子達も何人も来ている。
愛子や小鳩の同じ学校の生徒も居るのでよく分かるが、彼女達とエミは火花を散らして互いに牽制しあっていた。
ただ愛子はエミがどこまで人外と生きる覚悟があるのかが少し気になっている。
寿命や種族が違う人と妖怪の関係は、人が考えてる以上に難しい。
ましてかつては人と争い迫害された経験のある、吸血鬼と人が愛し合うのは本当に難しいだろう。
(横島君なら……)
最悪の場合は愛する者の為に人としての全てを捨てるほどの覚悟が必要だと愛子は思うが、エミにそこまでの覚悟があるのか愛子には分からない。
ただ横島ならばきっと迷わないのだろうと思うと、愛子は胸の奥が微かに苦しくなる気がした。
何はともあれこの日は夜遅くまで唐巣の教会から笑い声は絶えることはなかった。