ゆく年くる年
一方クリスマス間近な同じ日、令子はおキヌと共に氷室家を訪れていた。
おキヌは昨年と同じく里帰りの為に帰省したのだが、令子はおキヌの卒業後について氷室夫妻に説明する為に一緒に行くことになったようである。
加えて令子は氷室夫妻から遊びに来てほしいと前々から誘われており、今回は二~三日泊まる予定だった。
「凄い雪ね」
「去年はもっと多かったですよ」
都内から車で氷室神社を目指していた二人だが、関東を抜ける頃になると雪がちらつき始める。
日頃はオープンカーを好む令子だが、この日は冬の氷室神社に行く為にわざわざオフロード向けの車を購入していた。
まあ選択肢としてはレンタカーや電車もあるのだが、他人の乗った車は嫌だし電車も面倒だからと新たに車を購入する辺り令子らしいのかもしれない。
「そういえば美神さん寒いの嫌いでしたね」
ちらちらと舞い落ちる雪が、車のフロントガラスに触れてはあっという間に消えていく。
すでに景色は一面の銀世界であり、おキヌはそんな景色を見つめながらふと令子が寒いのが嫌いだったことを思い出す。
「寒いのも暑いのも過ぎると嫌いなのよ。 家でゴロゴロしてるのが一番だもの」
おキヌは今年始めての雪景色を楽しんでるが、令子はいつもと変わらない様子である。
基本的にインドアな令子は仕事や気晴らしで旅行などに行くことはたまにあるが、何処に行ってもほとんどホテルや旅館を出ないことが多い。
今回の氷室家行きも当初令子はあまり乗り気ではないようだったが、おキヌが一緒に来てほしいと頼んだ結果だった。
放っておけばおキヌが戻って来るまで引きこもってしまう令子をおキヌが心配した為である。
「お義父さん、お義母さん、早苗お姉ちゃんただいま」
「お久しぶりです。 氷室さん」
さてそんな二人の乗る車は、多少雪で予定の時間より遅れながらも氷室家に到着した。
氷室家の人々は令子とおキヌを温かく迎えてくれて、おキヌのみならず令子も何処かホッとした表情になる。
「やっぱり自宅に温泉っていいわね。 東京なんかに帰りたくなくなるわ」
到着した挨拶もそこそこに令子とおキヌは、冷えた身体を温めようと氷室家自慢の露天風呂に入っていた。
早苗が気を効かせて熱燗を持って来ると、令子は上機嫌な様子で熱燗を飲み始める。
「そうけ? わたしは何もねえこんな田舎は好きでねえだ」
「東京は便利なのは便利よ。 それにGSだと田舎じゃ食っていけないしね。 ただ端から見るよりはいいとこばかりじゃないわよ」
熱燗を持って来た早苗も露天風呂に入りおキヌや令子と何気ない話をするが、都会に憧れを抱く早苗に温泉と熱燗で機嫌のいい令子は東京で生きる大変さをゆっくりと語り出す。
その後も煩わしい東京を離れたこの日の令子は終始機嫌がよく、氷室家でゆっくりとした時間を過ごしていく。
もてなす側の氷室家の人々も令子を過剰にもてなすようなことはしなく、自然に対応していたことが令子には心地好かった。
結局おキヌと令子は氷室家でクリスマスとは無縁な休日を過ごすことになる。
おキヌは昨年と同じく里帰りの為に帰省したのだが、令子はおキヌの卒業後について氷室夫妻に説明する為に一緒に行くことになったようである。
加えて令子は氷室夫妻から遊びに来てほしいと前々から誘われており、今回は二~三日泊まる予定だった。
「凄い雪ね」
「去年はもっと多かったですよ」
都内から車で氷室神社を目指していた二人だが、関東を抜ける頃になると雪がちらつき始める。
日頃はオープンカーを好む令子だが、この日は冬の氷室神社に行く為にわざわざオフロード向けの車を購入していた。
まあ選択肢としてはレンタカーや電車もあるのだが、他人の乗った車は嫌だし電車も面倒だからと新たに車を購入する辺り令子らしいのかもしれない。
「そういえば美神さん寒いの嫌いでしたね」
ちらちらと舞い落ちる雪が、車のフロントガラスに触れてはあっという間に消えていく。
すでに景色は一面の銀世界であり、おキヌはそんな景色を見つめながらふと令子が寒いのが嫌いだったことを思い出す。
「寒いのも暑いのも過ぎると嫌いなのよ。 家でゴロゴロしてるのが一番だもの」
おキヌは今年始めての雪景色を楽しんでるが、令子はいつもと変わらない様子である。
基本的にインドアな令子は仕事や気晴らしで旅行などに行くことはたまにあるが、何処に行ってもほとんどホテルや旅館を出ないことが多い。
今回の氷室家行きも当初令子はあまり乗り気ではないようだったが、おキヌが一緒に来てほしいと頼んだ結果だった。
放っておけばおキヌが戻って来るまで引きこもってしまう令子をおキヌが心配した為である。
「お義父さん、お義母さん、早苗お姉ちゃんただいま」
「お久しぶりです。 氷室さん」
さてそんな二人の乗る車は、多少雪で予定の時間より遅れながらも氷室家に到着した。
氷室家の人々は令子とおキヌを温かく迎えてくれて、おキヌのみならず令子も何処かホッとした表情になる。
「やっぱり自宅に温泉っていいわね。 東京なんかに帰りたくなくなるわ」
到着した挨拶もそこそこに令子とおキヌは、冷えた身体を温めようと氷室家自慢の露天風呂に入っていた。
早苗が気を効かせて熱燗を持って来ると、令子は上機嫌な様子で熱燗を飲み始める。
「そうけ? わたしは何もねえこんな田舎は好きでねえだ」
「東京は便利なのは便利よ。 それにGSだと田舎じゃ食っていけないしね。 ただ端から見るよりはいいとこばかりじゃないわよ」
熱燗を持って来た早苗も露天風呂に入りおキヌや令子と何気ない話をするが、都会に憧れを抱く早苗に温泉と熱燗で機嫌のいい令子は東京で生きる大変さをゆっくりと語り出す。
その後も煩わしい東京を離れたこの日の令子は終始機嫌がよく、氷室家でゆっくりとした時間を過ごしていく。
もてなす側の氷室家の人々も令子を過剰にもてなすようなことはしなく、自然に対応していたことが令子には心地好かった。
結局おキヌと令子は氷室家でクリスマスとは無縁な休日を過ごすことになる。