それぞれの想い

「やっと幸せを手に入れた横島さんですが、長く続きませんでした」

そっと目を閉じた魔鈴は、アシュタロスとの最終決戦を語り出す


令子から取り出された魂の結晶を使い、コスモプロセッサーを作動させたアシュタロス

それにより世界を襲った大霊症

互いの愛する者のために、戦うことになった姉妹


あまりの真実に、小鳩と愛子は流れる涙を抑えきれなかった


「横島さんは絶対絶命のルシオラさんを庇い、瀕死の重傷を負ってしまいます。 そして……、ルシオラさんは横島さんを生かすために自らの霊気構造を分け与えました」

霊気構造の意味を説明された瞬間、店内は重苦しい沈黙に包まれた

自らの魂を分け与えると同じ行為を行えば、ルシオラがどうなるかなど素人でもわかる


その後、ルシオラの消滅を知らない横島はアシュタロスを倒すため自らの意思で戦いに向かう


「一時的にルシオラさんの力を得た横島さんは、美神さんを復活させてアシュタロスを追い詰めました。 その時アシュタロスは横島さんに言ったそうです。 『君とルシオラを新世界のアダムとイヴにしてやろう』と……」

その時、小鳩や愛子に加え冥子まで声を上げて泣いてしまった

あまりに理不尽な横島とルシオラの運命に銀一は怒りを抑えきれなく、エミやピートや神魔達は静かに目を閉じて何も言えない



「あの時アシュタロスに結晶を渡せば、約束は守られただろうって横島さんは言ってました。 アダムとイヴは大袈裟でも、ルシオラさんと二人静かに生きるくらいは認めただろうって…」

横島がその事を話したのは、魔鈴が恋人になった後の深夜のことである

夜中に悪夢でうなされる横島に気が付いた魔鈴は、あまりのうなされように横島を起こしていた

その時横島が語ったのが、アシュタロス戦の夢を見たこと

そして、あの時アシュタロスが言った選択の、選ばなかった未来の話であった



「話しが少し逸れましたね。 結局横島さんは、結晶を砕きました。 自らとルシオラさんの未来を犠牲にして……」

その後、横島が究極の魔体を破壊したことで戦いは終わる


「これがあの事件の真相です。 そして横島さんの苦悩の始まりでもあります」

ようやくアシュタロス戦の真相が終わった頃、最早食事どころか酒でさえ手をつける者は居なかった


それから、アシュタロス戦後の話しを魔鈴は続けていく


「一つ誤解が無いように言っておきますが、横島さんはアシュタロスは恨んでは無いようです。 結局選んだのは自分であり、全て自分の責任だと言ってました。 ただ……、美神さんと美智恵さんの事は嫌悪してます」

話はようやく横島が美神事務所を辞めた理由に入っていた

令子や美智恵のルシオラに対する考え方や気持ちを知り、横島は絶望して壊れてしまう

自分の価値観の全てが変わった横島は、令子や美智恵の本音を知り怒りや嫌悪感を密かに溜めていったことを、魔鈴は詳しく語った

22/29ページ
スキ