ゆく年くる年

一面の雪景色の中でケーキを頬張る子供達の表情は、なんとも言えないほど輝いていた。

魔鈴の料理と魔法が子供達に限りない希望と未来の可能性を見せていたことは確かだろう。

他では決して経験出来ないクリスマスであることは、小さな子供でも理解している。

何より同じ孤児院出身の魔鈴の活躍は多くの仲間にとっても本当に嬉しいものだった。



その後クリスマス会は食事から交流がメインに変わる。

久しぶりに来た魔鈴の話をみんな楽しみにしていたらしい。

そんな魔鈴の次に人気だったのは、人懐っこい笑顔のシロだった。

パタパタと動く尻尾もまた珍しく、小さな子供達に尻尾を触られたりして途中少し涙目になるなどあったがこちらも賑やかになっている。

対してタマモの方には大人しい感じの女の子が集まっていた。

正直社交的とは言えないタマモだったが、それでも魔鈴の元に来て以来だいぶ変化しているのだ。

以前のタマモはどこか一歩引いた感じがあったが、現在はそれもほとんど無くなっている。

タマモの場合はお世辞抜きにしても美しいと言える見た目から、結構子供達の注目を集めていた。


「ええ、付き合ってますよ。 私から告白したんです」

一方の横島だが、魔鈴の隣に座らされて二人の出会いから関係まで根掘り葉掘り聞かれていた。

元々いろんな意味で注目を集めることには慣れてる横島だがこういった経験はあまりなく、なんとも対応に困った表情をしており逆に魔鈴の方が肝が据わっている。

流石にアシュタロス戦やルシオラなど特定のことは伏せたが、横島が元々別のGSの助手だったことから始まり偶然深夜に助けられたことなど言える範囲で素直に語っていく。

まあ横島の名誉の為にもあまり恥ずかしい過去はそれとなく隠されたが、見た目に反して意外と頼りになると魔鈴に言われると横島は恥ずかしそうに笑ってごまかすしかできなかった。

気の早い子供はいつ結婚するのかと囃し立てたりもするなど、横島はすっかり子供達のおもちゃにされるが魔鈴は本当に楽しそうである。

途中で半ばやけくそで開き直った横島は、魔鈴の孤児院時代の話を尋ねるなど子供達と一緒になって騒ぎ始めるがそれもまた横島の長所であろう。

その後は時間が過ぎミニ四駆を持っていた子供を見つけると、ミニ四駆についてアドバイスしたりする姿も見られたとか。

結局その日は夜遅くまで孤児院で楽しい時間を過ごすことになった。



「すっかり遅くなってしまいましたね」

そして魔鈴達が後片付けを始めたのは年少組の子供達が寝た後だった。

中高生の子供達が後片付けを手伝ってくれており、魔鈴や横島達は洗い物や残り物の整理など後片付けをしていく。


「流石に子供のパワーは凄いっすね~」

子供と一緒に騒いだ横島はある意味子供と同レベルなのだが、それでも流石に疲労感を感じてるらしい。

タマモはともかくシロまで微妙に疲れてることからも、いかに子供達がパワフルかがわかる。

楽しい疲労感は心地好いものがあるが、同時に孤児院を運営する大人達の苦労も僅かだが垣間見ることになった。



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