ゆく年くる年

さて楽しい食事の時間もあっという間に過ぎていき、いよいよ残すはデザートのみになっていた。

一応デザートまでのバランスを考えて考案されたメニューだが、すでに小さい子などはお腹いっぱいになってる子も当然居る。

上は高校生から下は幼稚園児までかなり年齢差がある子供達が居るだけに、流石にみんながちょうどいい量の料理を作るのは不可能だった。

まあ魔鈴としては残った料理やケーキは次の日に食べれるようにと考えて作っているので、あえて多めに作ってはいるが……。



「うわ~、大きなケーキ」

最後のデザートのクリスマスケーキは横島とシロが二人がかりで運ばねばならぬほど大きな物が二つに、それぞれに一人用の小さな丸いケーキが一つずつ配られていた。

大きなケーキは直径六十センチはあり、普通ではなかなかお目にかかれない大きさである。

その大きさと綺麗にデコレーションされたケーキには、年齢や男女関係なく驚きの声を上げていた。


「それと、これは私たちからのプレゼントです」

ケーキに驚く孤児院の一同を前に、魔鈴は占いに使用するような水晶玉を手に持ちみんなに見つめるように告げる。

何が起きるかワクワクドキドキしている子供達に思わず笑みがこぼれる魔鈴だったが、その時タマモが魔鈴の持つ水晶玉にそっと幻術を使う。


「えっ……」

「雪だ……」

水晶玉が突然光りを放つと、水晶玉を見つめていたみんなには見知らぬ雪景色が見えていた。

しかも不思議なことにテーブルや椅子などは残っており、まるで孤児院から雪景色に瞬間移動したような感覚なのだ。

しかもその景色は見ている者には本物の雪景色に見えており、あまりの事態にほとんどの者は声を発することすら忘れた様子である。


「この景色は魔法で作り出した幻なの。 みんな危ないから走ったりしてはダメよ」

驚きのあまり事態を理解出来ない孤児院のメンバーに魔鈴は種明かしをするが、それでも驚きは収まる様子はなかった。

孤児院の大人は院長先生を始めみんな魔鈴がGSであり魔法を研究してるのは知っているが、現実的に目の前で見せられると驚くしか出来ないようなのだ。

ちなみにこの魔法というか幻術は、タマモの幻術を魔鈴の魔法でコントロールしていたのである。

元々タマモの幻術はタイガーと違い視覚に見せる訳ではなく精神を操る術なのだが、魔鈴はそれを一般人向けに弱めて視覚に幻を見せるように調節していた。

実はこのタマモと魔鈴の合体魔法は以前に魔鈴の親友の綾が来た時に、魔鈴がタマモの幻術を体験した経験を元にタマモと二人で改良したものである。

術の効果を弱めて立体映像程度の感覚にすることで、店のイベントにでも使えないかと考えた魔法だった。

元々僅かな資料から魔法を蘇らせた魔鈴は、この手の調整というか改良は結構得意だったりする。

子供達に夢と希望を見せてやりたいと考えた魔鈴が、タマモに頼んで今回初めて他人に使用した魔法だった。



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